紅白歌合戦の視聴率34.3%はNHKスクランブル化後の契約率
2021年の大みそかに放送された第72回NHK紅白歌合戦第2部の関東地区平均視聴率は、前年比6.0ポイント減の34.3%で、2部制となった1989年以降で過去最低だったという報道です。前年の40.3%からは6.0%の減少で、これまで最低だった2019年の37.3%を更新し、1962年以降でも最低となったということです。関西地区の第2部平均視聴率は35.0%(前年比4.3ポイント減)で同じような数字です。また午後7時半からの第1部は関東が31.5%(同2.7ポイント減)、関西が31.1%(同1.7ポイント減)となっています。
紅白歌合戦の視聴率を見ると、番組が始まった1962年には80.4%、翌年は81.4%を記録しており、国民の殆どが見ていたことになります。その後も1984年まではほぼ70%以上の視聴率(2回だけ69%台があった)であり、それまでNHKは公共放送であったと言えます。1985年に66.0%に落ち、翌年の1986年には59.4%と50%台となり、その後1999年まではほぼ50%台の視聴率となっています。2000年に48.5%と40%台に落ち、2020年まではほぼ40%台をキープしています(5回は39%台、1回は37%台を記録)。2021年から30%台に突入し、それも30%前半から20%後半のレンジに入ったと推測されます。
これはNHKが国民に支持される放送局ではなくなったことを意味しています。紅白歌合戦の高い視聴率は、NHKが公共放送を自認し受信機がある世帯から受信料を徴収する重要な根拠となってきました。国民の過半数の支持があれば、受信料法案も国会で可決できます。しかしこれが34.3%になると、国民の約3分の1の支持しかなく、民主主義が機能していれば国会に受信料法案を提出しても可決できないこととなります。従って2021年紅白歌合戦の視聴率は、NHK受信料制度見直しの契機になると思われます。
NHKは1950年6月に設立されており、当時テレビ放送局はNHKのみでした。そのためNHKは公共放送局というより国民放送局と言ってよい存在であり、今の民間放送の役割も担っていました。従ってその維持費用を国民から徴収する制度は妥当性があったと言えます。しかし1953年に民間放送局である日本テレビが設立され、公共放送と民間放送の棲み分けが進みましたが、NHKは設立当初の公共放送+民間放送という放送形態を変えず、放送のデジタル化に伴い、本来なら個別の有料契約とすべきBS放送の維持費まで受信料で徴収することとしました。これについては2007年に総務省のNHKに関する有識者会議でも問題になっていますが、その際NHK内部で検討することとなりましたが、20年以上うやむやになっています。
NHK受信料は、国会がNHKの予算を承認することによって、その前提となる受信料を承認することとなっていますが、国会議員がすっかりNHKに取り込まれ、NHKの傭兵化しています。そのため受信料がここまで膨らんでしまっています。
今回の紅白歌合戦の報道についてもネットではたくさんの書き込みがあり、多くがスクランブル化を求めるものです。NHKの視聴率で紅白以上のものはなく、紅白の視聴率はNHKの最大支持率を表すと言えます。これが約3分の1になったということは、公共放送としての位置付けも怪しくなったことを意味します。34.3%という数字は、今NHKがスクランブル化された場合にNHKと有料放送契約を結ぶ世帯の割合に近いと思われます。紅白の視聴率は今年にも30%を割り込み、20%台が定位置になると予想されます。そうなると今後NHKスクランブル化を求める声はますます強まり、国会議員も無視できないものとなってきます。