中国が資本主義で日本は社会主義だった!?
日本は1990年代のバブル崩壊以降所得が殆ど上がっていません。その中で消費税などの税金、年金掛け金や健康保険料などの公的負担金は上がっており、所得に占める公的支出の割合は45%に達しているということです。
バブル崩壊まで日本は1億総中流と言われ、貧富の差が少ないのが社会的特徴でした。それが非正規社員の増加やベンチャー企業の株式公開などで貧富の差が拡大しています。ベンチャー企業成金である前ZOZO社長前沢友作氏は、資産家であることを隠すことなく、宇宙旅行を実現しましたし、ネットで応募した人にお金を配ることもしています。汗水たらして作ったお金ではないため、このような使い方が出来るようです。これは楽天の三木谷社長がプロサッカーチームやプロ野球チームに自分の資金を突っ込むのと同じです。それまで大したことなかった自分の株式がある日突然数千億円の資産価値になるのですから、宝くじに当たったようなものです。だからお金の有難さが分からなくなると思われます。
一方では非正規社員は2,000万人以上となっており、生活の不安定な人たちが増えています。以前は貧乏人から搾取した人がお金持ちになることが多かったのですが、最近はそれよりも株式成金が多くなっています。実際何百億円以上の資産家になるには、自分の会社を興し、株式上場させるしかないと思われます。
これにより日本にも資産数百億円以上のお金持ちが増えましたが、中国と比べるとまだ少なくなっています。2021年資産10億ドル(約1000億円)以上の企業家の数は世界で3,228人で、この内中国人は1,058人で32.8%を占めています。次が米国人で698人となっています。日本の企業家は100人未満(フォーブス誌の「日本の富豪50人」の50番目が1,242億円)。人口が中国14.4億人、日本1.2億人なのでほぼ人口に見合っているとも言えますが、中国で資産家が増加したのは2000年以降であり、何か原因がありそうです。
その原因は中国最高指導者鄧小平の「先富論」に求められると思われます。これは「豊かになれる条件を持った人から豊かになればいい」という考え方で、資本主義の考え方そのものです。その結果株式公開で多くの富豪が生まれ、この富豪たちが投資することで新たな企業や事業が生まれ、中国が世界第2位の経済大国となっています。一方日本の総中流という考え方はこれを否定するものであり、貧富の差を出来るだけ小さくしようとするものです。これは社会主義の考え方と言えます。即ち、鄧小平が「先富論」を唱えた1980年以降中国は資本主義を目指し、日本は社会主義を目指していたと言えると思われます。この結果、中国では日本を遥かに凌ぐ大富豪が生まれ、資本主義国家の様相を呈しています。中国の実体は、政治体制は共産党1党独裁の非民主主義国家ですが、経済はアメリカに似た資本主義国家です。それに対して日本は、政治体制は民主主義国家ですが、経済は社会主義体制または未発達な資本主義体制と言えます。
最近中国では習近平主席が「先富論」を否定し、「共同富裕」と言う考え方を提唱しているようですが、これが行き着くところは日本の総中流に近いと思われます。それは全員が富裕になることは難しく、富裕者の富を貧者に配分して実現するしかないからです。一方日本は、鄧小平の「先富論」を実践して経済を活性化するタイミングに来ているように思われます。日本と中国が再び逆の方向に動くことになると思われます。