瓦版を廃業に追い込んだ新聞が瓦版の立場に

日本新聞協会の資料によると2021年10月末時点での一般紙の発行部数(購読部数)は30,657千部となり、前年同期より1,794千部、5.5%減少したようです。この結果一世帯当たりの一般紙購読割合は0.53となっています。2000年には1を超えていましたから、20年で世帯の半分しか購読しなくなったことになります。2020年には2019年から2,423千部、6.9%減少しましたから、2021年度は減少部数および減少率とも低下しています。これをもって喜んでいる新聞関係者もいるようですが、とんでもないと思います。2021年度の減少部数が続いたらあと17年で発行部数0となる計算です。今後も発行部数の減少が続くことは間違いなく、これほど終わりがはっきりしている業界はないと思われます。

新聞の発行部数がこれ程減少する理由は3つあります。1つはインターネットの発達です。インターネットの情報はリアルタイムであり、翌日届く新聞では太刀打ちできません。2つ目が料金の問題です。新聞は紙に印刷する、家庭に配達するなどコストがかかるため高価となり、無料や有料でも安価なインターネットの料金に太刀打ちできません。

3つ目に収入が増えない中で支出が膨らむ家計状況があります。1990年代のバブル崩壊以降家計の収入は殆ど増えていない中で、消費税や年金掛け金、健康保険料などの公的負担が増加し、この割合は家計収入の45%に達しています。それ以外にも携帯料金が大幅に増加し、家計の支出を圧迫しています。その結果家計は支出削減を迫られ、4,000円以上する新聞料金が真っ先にターゲットとなりました。

家計の支出増加のうち携帯料金支出は今後多少減るでしょうが、大きく減るとは考えられません。またインターネットによる情報提供料が大きく上がることも考えられません。それに今年は物価が大きく上がることが予想されており、家計の支出削減圧力は更に強まります。この結果、新聞購読数は昨年以上に減少してもおかしくありません。

この状況は、明治初期にそれまでの木版刷りの瓦版を活版印刷の新聞が廃業に追い込んだ状況に似ています。当時の瓦版が今の新聞で、当時の新聞が今のインターネットです。新聞の誕生から瓦板が消えるまでそう時間はかかっておらず、新聞も発行部数が2,000万部を切ってくる5,6年先には廃業に追い込まれる新聞社が続出すると考えられます。歴史は繰り返す、です。