東京都議選自民党敗北の本当の原因は学会員の自由投票

昨年7月に行われた東京都議選の結果、50議席回復が見込まれた自民党が33議席に留まり、反対に45議席から大幅な減少が見込まれた都民ファーストの会が31議席と健闘しました。この原因については、コロナによる営業規制や人流抑制によって生活を脅かされている人たちが自民党に投票しなかったから、病気入院していた小池知事が退院して都民ファーストの応援に入ったからとか言われています。私は、コロナ問題に対する自民党政権の対処に対する反発などから、自民党支持者ばかりでなく無党派の「とりあえず自民党」層が自民党候補に投票しなかったからではないかと考えていました。

その後8月に行われた横浜市長選で自民党推薦の小此木候補が敗北した理由もこれで説明できます。しかしこれではその後行われた衆議院総選挙で自民党が大勝した結果が説明できません。確かにその頃はコロナ感染者が大きく減少しており、自民党に対する国民の評価が揚っていたことはあると思われます。また自民党過半数割れもあるとの新聞予想もあり、野党政権に不安を持つ有権者が自民党に投票したこともあると思われます。この2つで十分とも考えらますが、それよりも大きく影響したと考えられる原因が分かりました。それは創価学会員(学会員)の投票行動です。

学会員は選挙の場合創価学会の政治団体である公明党候補に投票するのは間違いありません。東京都議会選挙でも公明党は改選前と同じ23議席を確保し、学会員が想定通りの投票行動をしたことが分かります。それは公明党候補が学会員であり、同じ信仰を持つ者に投票することは当然と言えます。一方公明党候補がいない選挙区については選挙協力により自民党候補に投票することが想定されていましたが、これがそうならなかったと考えられます。即ち、公明党候補がおらず自民党方候補がいる選挙区の学会員は必ずしも自民党候補に投票していないということです。その結果、公明党候補は全員当選し、自民党候補は多数落選するという結果になったと思われます。

この流れは2020年11月の大阪都構想住民投票で出来上がったものです。この住民投票は、当初大阪都構想に反対していた公明党が推進する大阪維新の会から住民投票を認めなければ次の衆議院総選挙で公明候補に対立候補を立てると脅されたことから、公明党が住民投票を認める姿勢に転じたものです。しかし公明党の真意は反対であり、学会員を賛成投票で拘束せず、自由投票としました。その結果、学会員の多くが反対の投票を行い、大阪都構想は反対多数で否決されることとなりました。多分学会員が選挙で自由投票を許されたのはこれが初めてだと思われます。私はこれをもって公明党(創価学会)は「パンドラの箱を開けた」(「大阪都構想住民投票、公明党はパンドラの箱を開けたかも」参照)と思いました。同じ信仰を持つ公明党候補へ投票することは当然だと思いますが、考え方も違う他党の候補者に投票するよう拘束されることには不満が残ります。これでは投票奴隷と同じです。この感情が解放されたのが大阪都構想の住民投票でした。これで自由に投票する喜びを知った学会員に従来のように自民党候補に投票するよう指示することは難しくなったと思われます。その結果、東京都議選の場合、自民党候補への投票はお願いベースで拘束力は伴っておらず、多くの学会員が前回投票した都民ファーストの候補に投票したと考えられます。これにより自民党候補の得票が伸びず、都民ファーストの得票が伸びることとなったのです。

一方昨年10月の衆議院総選挙では、学会員に自民党候補に投票するよう拘束力有る指示が出ていたと考えられます。それは新聞で自公過半数割れの予想もあったことから、それを何としても防ぐためです。また自民党が候補を立てず公明党が候補を立てる選挙区もいくつかあることから、バーターの意味も理解出来ました。この結果公明党が候補を立てず自民党候補が立てた小選挙区では殆どの学会員が自民党候補に投票したと考えられます。この結果自民党は小選挙区で圧勝しました。

現在次の参議院選選挙で自公とも候補を立てる複数人選挙区で相互推薦を求める公明党に対し、自民党が渋っているとして、公明党は相互推薦をせず、公明党が候補を立てず自民党が立てる選挙区では自民党候補を推薦しないと言い出しています。これは自民党に対する不満からとなっていますが、底流には学会員に投票の自由を求める動きがあることが原因と思われます。そろそろ自公政権の終わりが近づいているように思われます。

*1月27日、創価学会は今後の国政選挙などに向けた支援の考え方を発表し、支援するかどうかの基準は「公人としてふさわしい人格や見識を備えている」ことだとし「党派を問わず見極めた上で、判断していく」としていることから、公明党候補がいなければ自民党候補に投票するという縛りは正式に無くなったと思われます。