日テレ桝アナ転職で分かる東大農学部の特殊性

日テレの人気アナ桝太一さんが同志社大学ハリス理化学研究所の助教に転職することが話題になっています。40歳という社会人人生の分岐点で、年収2,000万円を超えるサクセスロードを降りて、年収半分以下の未開の職業に転じるというのですから、多くのサラリーマンの興味を引くのは当然です。転職の発想は、40歳に差し掛かったサラリーマンなら多くの人が漠然と持っています。40歳と言う年齢は、それ以降の会社での自分の人生が大方分かる時期です。出世コースに乗っているか、それとも窓際コースかかっきり分かります。そこで出世コースに載っていない人こそ転職を考えますが、今の会社以上に処遇してくれるところは見つかりそうもなく断念します。

桝アナの場合、フリーになれば年収20倍以上になるとの予想もあるようですから、収入を考えればちょっと考えられない選択です。これについては、桝アナが東大農学部大学院で魚の研究をしており、ロマンが勝ったとの見方があります。私は、桝アナはそもそも就職の時点で進路を誤っていたのではないか、と思います。東大農学部で、しかも大学院にまで行って魚の研究をし、挙句の果てが日テレアナウンサーになるという職業選択がどこから出てくるのでしょうか?考えられるとすれば日テレは入社難易度が高いことから、東大入試と同じで一番難しい会社を志望したとしか考えられません。

桝アナを見ていて私が会社員時代の同僚ととても似ていると思っていました。そして桝アナの経歴を知ってその理由が分かりました。2人とも麻布中高出身で、かつ東大農学部で魚の研究をしていたのです。それ以外に育ちの良い秀才の子供がそのまま年を取ったような顔や性格の良さまでそっくりです。彼は農学部在学中に弁護士の父親が亡くなり、農学部卒業後司法試験の勉強をして、その間結婚して子供が出来たことから司法試験を断念し、私がいた金融企業に入社してきました。金融業界は経済学部や法学部出身者が大多数ですが、その中に東大農学部出身がポツンポツンといました。2019年12月に日本郵政に処分案を漏らしたとして高市総務大臣から更迭された総務省の鈴木事務次官も東大農学部卒でした。このように東大農学部は割と専攻と関係のない仕事についていることが多いように思われます。

東大合格者は私立中高一貫校卒業者が大多数を占めますから、東大農学部もこれらの卒業者が多数を占めます。これらの卒業者は東京など都会の人が多い訳で、農業関係の学部である農学部に進学することがおかしいのです。そうなっているのは、東大理系の中で農学部の難易度が一番低いからだと思われます。東大理系を志望している受験生にとって、農学部は目標を達成しやすいターゲットということになります。従って将来の職業とは無関係に入学している人が多いと考えられます。その結果が卒業後の職業がバラバラという結果になっているように思われます。桝アナもこの例で、転職も研究した魚に関する職場ではなく、どちらかと言うとアナウンサーの延長上の職場です。

勿論東大農学部卒業者の多くは製薬会社や食品会社、化学会社などに就職しています。私が知っている創薬ベンチャー企業San Bio(マザーズ上場企業)の会長と社長(当時)は東大農学部卒(その後キリン勤務)でした。それでも桝アナ転職事件は、東大農学部の上記性格から生じたと考えると理解できます。