ジョブ型雇用なら職業高校→大学の一貫教育が有利

最近ジョブ型雇用を導入する企業が増えています。ニュースで拾うと日立、KDDI、富士通、資生堂、パナソニック、双日、三菱ケミカルなどがありました。ジョブ型雇用とは、予め従事する仕事の内容を明確にして雇用する形態のことで、欧米では主流です。例えば、企業で経理担当者が不足すれば、社内の他の部署から回すのではなく、経理実務経験のある即戦力の人を採用します。その人は経理専門職であり、社内のローテーションで他の部署に移ることは想定されていませんし、本人も考えていません。これだと業務の専門性が高まり、仕事の精度が上がることになります。企業運営を高いレベルに持っていこうとすれば、避けられない雇用形態です。一方現在日本企業の殆どが採用している雇用形態はメンバーシップ型雇用です。これは大学や高校卒業後一括採用された専門性を持たない社員を配属先で教育し、時間をかけて戦力化していく雇用形態です。終身雇用が前提であり、一旦入社したら定年退職までその企業で働くことを想定しています。通常社員は3~5年周期で職場を移動し、管理職になるまでにその企業の3~5の業務を経験することとなります。この結果、企業の広範な業務を知ることとなりますが、専門性は身に尽きません。この方式のメリットは、企業内コミュニケーション・連携の良さにあります。この雇用形態の場合、優良企業に入ったらそのメンバーにふさわしい報酬、福利厚生、社会的評価を一生に渡り享受することができることとなります。その結果採用試験は、富裕層クラブの入会審査の様相を呈します。そのため待遇が良い銀行、生保、損保、インフラ企業などでは、社員や取引先の子弟が優先的に雇用されることとなります。これは国際競争を余り意識していない雇用形態と言えます。

今後は日本でもジョブ型雇用が国際企業を中心に拡大することは間違いありません。それは、1990年以降の日本企業の停滞が専門性の欠如によっているからです。これまで企業は専門性を余り持たない学生を一括採用し、OJTで業務を教育してきましたが、これでは同じことの繰り返しです。仕事を覚えてしまうとその上を目指そうと言うことにはありません。これがある業務の専門家として採用されれば、日々勉強し、高みを目指します。それが企業を高みへ導くこととなります。日本企業の業務のやり方は、1990年の段階で進歩が止まっているのです。これを打破するにはジョブ型雇用を増やすしかありません。切り替えるではなく、増やすと言ったのは、専門性を有さず、同じ仕事を長期間続けてくれた方が良い職場が存在するからです。例えば、製造現場や総務、庶務などです。メーカーの営業もこれに当たると思われます。

ジョブ型雇用が増えて来ると、高校から大学への進路も変わってきます。これまで日本の企業はメンバーシップ型雇用をとってきたため学生に専門性を求めませんでしたが、これからは専門性を有する学生を中心に採用するようになります。例えば、経理部門には公認会計士や税理士資格取得者や簿記1級取得者が中心になりますし、情報処理部門では基本・応用情報処理試験合格者が最低条件になってくると考えられます。こうなると、これまでのように普通高校から大学に進学するよりも、職業高校(工業、商業など)から大学に進学した方が有利になります。というのは、普通高校から大学への進学は、企業が専門性を求めないから成り立っているからです。専門性を有しないまま大学に入学して1~2年間教養教育を受け、専門教育を1~2年程度受けても専門性は身に尽きません。それよりも工業高校や商業高校で3年間基礎的専門教育を受ければ、大学進学後直ぐに次の段階の専門教育を受けることができ、就職決定(大学3年次)までに高い専門性を身に着けられます。

2月7日のヤフーニュースに、諫早商業高校情報科を今年卒業する39名のうち28名が基本情報処理技術者試験(以下基本情報試験)に合格した(合格率72%)というニュースが掲載されていました。基本情報試験は、大学で情報処理を学ぶ学生なら在学中に、企業で情報処理部門に配属された若手なら早期に取得することが奨励される国家試験です。毎年2回試験があって、毎回申込者約10万人で、合格者2~3万人、合格率20~30%となっています。私もこれを受けようと約1年勉強しましたが、相当難関です。今年の大学入学共通テストで数学の難易度が高かったと言われていますが、あのような問題が多いと考えて貰えばよいと思います(午後問題)。従って大学の情報専攻学生でも合格は容易ではなく、合格を諦めた学生も多いと思います。それが高校生で、しかも全クラス39名のうち28名が合格したというのは驚異的と言えます(生徒も凄いけど教師も凄いです)。彼らが大学情報科に進学するのなら3年次に編入しても良いレベルです。また企業においても競って情報部門要員として採用したい人材となります。

昨年慶応大学法学部1年の男子学生が18歳で司法試験に合格して話題になりましたが、彼は中学校時代(慶応付属)の裁判所見学で法律に興味を持ち、そこから法律の勉強を始め、高校時代に司法試験を受験しています。このように専門性の高い学問でも中高時代から勉強を始めれば、攻略は容易となります。これからは、将来なりたい職業が決まったら、そのための勉強ができる中学または高校に進み、そのまま大学に進学する時代になると考えられます。ジョブ型雇用を睨み大学も職業高校からの進学の間口を広げる必要があります。