進歩が止まった日本、1つ上の学位を取る運動が必要

2月11日のヤフーニュースに2月8日に放送されたBS-TBS「報道1930」の内容が掲載されていました。元ゴールドマンサックス調査部長で、菅首相のブレーンと言われたデービッド・アトキンソン氏と自民党税制調査会長宮沢洋一参議院議員をゲストに招いて『菅首相の経済ブレーン・Dアトキンソン氏に問う コロナ禍日本への処方箋』というテーマで議論したようです。アトキンソン氏の主張は、マクロ分析と国際比較に基づき、日本の問題点とそれに対する処方箋を明確に示しており、私は彼の熱心な支持者です。彼の主張の中では、日本の財政を再建するためには、GDPに占める輸出の割合16%を韓国並みの42%、ひいてはドイツ並みの46%に引き上げる必要がある、というのがお気に入りです。日本のGDPは約530兆円で、税収は約65兆円ですから、GDPの約12%が税収となります。今年の予算規模は約106兆円ですから、GDPが1,000兆円になれば予算を税収で賄うことができます。かつ国債残高約1,000兆円もGDP比約120%となり、米国並みとなります。今後所得が増えない限り増税は無理ですから、先ずはGDPを増やしかありません。そしてGDPを増やす方法は、GDP比で韓国の3分の1以下である輸出を増やすしかありません。1990年以降日本は輸出額が増えず、韓国は増やしてきましたが、その原因はこれまで韓国の賃金が日本より低いためと言われてきました。しかし国際統計上韓国の1人当たり給与所得は日本のそれを年間約38万円上回っていることになっています(2020年度)。2021年度はこれが更に拡大したと言われています。従って日本の輸出額が増えないのは賃金の問題ではなく、他に原因があることになります。この番組の議論はこの問題が中心テーマだったようです。

この中でアトキンソン氏は、韓国の賃金が日本を抜いたのは、世界で断トツの研究開発費にあると述べています。韓国の1人当たり研究開発費は圧倒的世界トップで、日本は12位であり、これが回りまわって賃金差になっていると言います。2位がアメリカ、3位がシンガポール、4位が台湾となっておおり、勢いのある国が上位に来ています。

これに「設備投資の促進」「人材投資」を加えて三大基礎投資というようですが、この三大基礎投資のいずれもが日本は進んでいないと言います。そして「決定的な違いは人材投資。これは義務教育や大学ではなくて、社会人になってからの教育への政府支出。これが日本はGDPに対して0.1%。アメリカは2%。欧州は大体1%。比べものにならない。だから(日本人は)学校出た時の教育のまんまで何十年も働きます」と言っています。

良く考えるとアトキンソン氏の指摘に同意せざるを得ません。確かに大学を出た後、勉強らしい勉強はしていません。就職してから得た知識は会社で得たものばかりです。これについて 宮沢自民党税制調査会長も 「日本はいままで社員の教育、人への投資は職場でOJT(オンザジョブトレーニング)だった。これだと前のレベルよりは上に行かないわけで、外でどう鍛えていくか、または新しい人材を採用するなど徹底的にやらねばならないのは間違いない。」と述べています。

このように日本人の知的水準は1990年頃から全く向上していないのが実体だと思われます。その結果所得は1990年頃と変わらず、順調に伸びた韓国に追い抜かれ、台湾にも追い抜かれようとしています。韓国や台湾の受験競争の激しさや海外留学熱は良く知られていることころであり、その分韓国や台湾は知的水準を引き上げています。一方日本はゆとり教育と称し、勉強する姿勢を緩め、海外留学も減少の一途です。もう海外に輸出できる物を作る知恵も枯渇しているものと思われます。

これが分かると、国民の知的水準を引き上げる運動が必要なことが分かります。私は、国民が自分の最終学歴を1つ引き上げることを目標し、それに要する費用を国が助成するのが良いと考えます。例えば、高卒ならば通学や通信教育で大学講座を受講し、学位の取得を目指します。学士は修士の取得を目指し、修士は博士の取得を目指します。これにより職場の知的水準がワンランク上がり、韓国や台湾にも負けない知的水準となり、輸出が増加すると考えられます。これをしない限り日本は1990年のままです。