「Catch Up Korea」戦略が必要
最近韓国経済のニュースを見ると日本との格差が拡大していることを痛感させられます。韓国のトップ企業サムスン電子(サムスン)は半導体メーカーとしてもDRAM(シェア約44%)とNAND型メモリー(約33%)で世界シェアトップですが、半導体の受託生産でも台湾のTSMC(約54%)に次いで世界2位(約17%)にあります。半導体専業かというとそうではなく、世界のテレビ市場で昨年販売額基準のシェアが29.5%、販売台数基準では19.8%と、いずれもトップです。 以前は低価格で日本製テレビのシェアを奪って行きましたが、今では低価格品は中国製に任せ、超高画質の量子ドット発光ダイオード(OLED)テレビで高品質の評価を確立し、高価格帯で販売を伸ばしているようです。サムスンはスマホでも高価格帯を中心に昨年シェア20%で世界トップとなっています。従って我々が依然聞いていた韓国製品は安物という話とは完全に違ってきています。当然で、労働者の給与水準は韓国が日本より年間38万円余り高い(2020年OECD資料)こととなっており、韓国企業はもう安物を作っていては利益を上げられなくなっています。そのため韓国企業は高級品にシフトしています。これはかっての日本企業も試み失敗しましたが、韓国企業は成功しているように見えます。この原因の1つは日本企業が国内向けに開発した商品をそのまま海外に販売する手法を取ったのに対して、韓国企業は国内市場が小さいことから最初から海外でたくさん販売することを考えて商品を開発していることがあるようです。これは米国企業のやり方であり、韓国企業の運営は米国企業に近いと思われます。
車で見ても以前の現代自動車の車はトヨタの物まねと言われましたが、今ではヨーロッパのデザイナーを起用し、すっかりスマートなデザインとなっており、品質でも米国でトヨタなど日本車を上回る評価が見られます。かってはmade in japanが高品質の代名詞でしたが、今ではmede in koreaが高品質の代名詞となっていると言ってよいと思われます。
これを反映しサムスンの2021年度決算は、売上高約27兆円、営業利益約5兆円となっています。営業利益率は約18%もあります。日本トップのトヨタの2022年3月期予想が売上高約30兆円、営業利益約2兆8,000億円、営業利益率約9%となっていますから、サムスンの営業利益はトヨタの倍近くです。サムスンだけかと言うとそうでなく、DRAMではSKハイニックスが世界2位(シェア約28%)、NAND型メモリーで世界3位(シェア約14%)となっていますし、テレビでもLGのシェアはサムスンに次いで世界2位(約18%)あり、こちらはOLED(有機EL)方式で評価を得ています。
このように韓国企業はmade in korea=高品質という評価を定着させ、高収益を謳歌しています。その結果労働者の賃金が日本のそれを年間38万円以上上回り、1人当たりGDPで日本を抜いた(購買力平価方式)ことになっています。それが分かるのがソウルのマンション価格で、1億円以下はない状況のようです。韓国の企業業績が好調でお金が市中に溢れていることが分かります。
韓国がここに至るまでには日本に追い着き、追い越せの時代があったわけで、半導体もテレビも自動車も日本の技術を導入しています。そして日本に追い着き、ついには追い抜いて世界トップになっています。と言うことは韓国企業の元の技術は日本企業のものと言うことであり、やり方によっては日本は韓国に追い着き、追い越せると言うことです。追い着け、追い越せは戦後日本が欧米に対してやってきたことであり、今後はこれを韓国を対象にやればよいということになります。日本がバブル後30年の停滞を破るためには「Catch Up Korea」戦略が必要です。