元日産ケリー被告判決、法務省一家の茶番劇
3月3日、2018年11月に元日産ゴーン会長(ゴーン被告)と共に逮捕された元日産役員ケリー被告に対する東京地裁の判決がありました。容疑となった有価証券報告書へのゴーン被告報酬の不実記載はあったとし、対象期間8年のうち7年間分についてはケリー被告に責任はないが最後の1年分については責任があるとして、懲役6カ月、執行猶予2年を言い渡しています。
これは判決そのものが出鱈目です。ゴーン被告は実際に約10億円の報酬しか受け取っておらず、ゴーン被告が正当な報酬と考えていた約20億円との差額約10億円を将来何らかの形で取り返そうとしていたことは事実のようです。それはゴーン氏が日産役員を退任したあと日産との間で業務委託契約などを結び、その報酬として受け取る計画だったようです。そのための契約を当時のゴーン会長と西川社長との間で結んでいたことも事実のようです。そしてこのスキーム作りにケリー容疑者が重要な役割を果たしたと言うのが警察の主張のようです。しかし商法上会社と取締役間の契約は取締役会の承認がないと有効となりません。この契約が日産の取締役会で承認されておらず、日産はこの契約で決められた報酬を支払う義務を負っていません。西川社長は2019年2月に西川社長が日産の2019年3月期第3四半期の決算報告をした際、この91億円については「将来支払わなければならなくなるかもしれないから保守的に引当金に計上した。私としては支払うことはないと思っている。」と述べています。ということは、支払い義務は確定していないということになります(確定していれば引当金ではなく未払金に計上される)。日産としては役員が検察と司法取引を行い、ゴーン被告とケリー被告が逮捕・起訴された以上支払い義務が確定している(未払金に計上する)ことにしたかったのでしょうが、監査法人が認めなかったものと思われます。従って、この西川社長の説明からは、支払い義務は確定しておらず、有価証券報告書に記載する必要はなかったことになります。
このようにゴーン氏が得ようと考えていた約91億円は絵にかいた餅の状態でした。そんなものを有価証券報告書に書いたらそれこそ虚偽記載となります。これが素直な解釈です。本件判決前のヤフーコメントを見ると、このように考えるコメントが6割以上を占めていました。その中のコメントの1つに「あとは裁判官が検察に遠慮せずに正しい判決を出せるかの問題」というものありました。今回の判決を見るとこのコメントが危惧する事態が起こったことが分かります。
容疑のうち7年分はケリー容疑者に責任はないと言っているのですから、検察のでっち上げだと言っているようものです。でも1年分だけ責任があるとして検察に花を持たせているのです。もし本件が全面的に否定された検察の権威が失墜することから、裁判官はこれを避けたかったものと思われます。量刑を見ると懲役6カ月、執行猶予2年となっており、ケリー被告に実害はないことから、裁判官は、ケリー容疑者はこれを受入れ米国に帰国すると予想していたと思われます。米国に帰国すればこの言い渡しは意味がなくなるからです。これを不服として控訴すれば刑が確定していなこととなり、米国に帰国できません。エマニュエル駐日米大使は、ケリー被告に対する東京地裁判決を受けて「法的手続きが終了し、ケリー夫妻が帰国できることに安堵している」という声明を出しています。これは米国に帰国すればこんな判決無意味なのだから無視すればよい、という意味だと思われます。私もその通りであり、ケリー容疑者は受け入れて米国に帰国すると思っていましたが、4日ケリー容疑者は控訴すると表明しました。この結果ケリー容疑者は控訴審の判決が出るまで米国に帰国できなくなりますが、弁護士であるケリー容疑者の職業道徳が汚名を着せられることを潔しとしなかったものと思われます。
これを受けて検察も控訴すると思われますが、検察は又不安のどん底に叩き落されることとなりました。普通に裁判すれば高裁では無罪判決となります。危惧されるのは、高裁の裁判官が地裁の裁判官と同じように検察の権威を守るため有罪を維持することです。日本の場合、刑事裁判は99%有罪となっており、裁判所が検察と一体になっていることが疑われます。共に法務省の管轄下にあり、兄弟のような関係であることから、裁判官は公平な裁判より検察の権威を守ることを重視しているように思えます。これを是正するためには、市民が参加する裁判員裁判を増やすしかないと言うことになります。ケリー容疑者は法務省一家の茶番劇の犠牲者ということになります。