日本は米国およびNATOと相互防衛条約を結ぶしかない
2月24日にロシアがウクライナに侵攻してから2週間が経とうとしています。数日で首都キエフ陥落と言われていたのが、ウクライナ軍の徹底抗戦でロシア軍の侵攻が止まっています。それでもロシア軍の兵力は強力であり、キエフ陥落は近いと言われています。例えキエフが陥落してもウクライナ軍の抵抗は収まりそうもなく、泥沼の戦いとなりそうです。欧米はウクライナ軍へ大量の武器を供給していますし、義勇軍も続々とウクライナ入りしているようです。これ程欧米がウクライナを支援するのは、ウクライナがロシアの支配下になれば、次は隣接している旧ロシア同盟国のポーランド、ハンガリー、バルト3国から始まり、更にはドイツ、フィンランド、スウェーデンなども危なくなるからです。だからドイツはこれまでのロシア宥和政策を捨てウクライナに対戦車砲や地対空ミサイルを供与するなど準交戦国並みの関与を始めています。
一方日本も即座に欧米が決めた経済制裁に加わるなど欧米と歩調を合わせています。2014年のロシアによるクリミア併合の際には、北方領土返還交渉をしていることを理由に欧米の経済制裁に加わらなかったことと好対照を示しています。これは北方領土交渉が暗礁に乗り上げていること以外に、ロシアのプーチン大統領と仲が良かった安倍首相が退陣していることが影響していると思われます。安倍首相ならば、まだ北方領土返還に期待し、欧米の制裁に加わらなかった可能性があります。
こんな中その安倍首相はプーチン大統領との仲をひけらかすようにテレビに出演し、今度はウクライナ戦争を利用して核シェア論を言い出しています。これはNATO加盟国のドイツが米国の核兵器をシェアして配備していることに着想したものですが、クリミア併合では欧米諸国と別行動をとった人が良く言えるな、と言う感じがします。NATO加盟国のドイツと米国は相互防衛義務を負っており、言わば一心同体の関係です。一方日本と米国が結んでいる日米安全保障条約は、米国が日本を守る義務を負っているだけで日本は米国を守る義務を負っていない片務的な契約になっています。言うなれば米国におんぶにだっこの契約です。米国はアフガニスタンから完全撤退するなど自国が不利益を受けない紛争には関与しない姿勢を明確にしています。これからすると日本と外国の間に軍事紛争が起きた場合に米国が日本を守るために戦いの前線に立つことは期待できません。たぶん前線は自衛隊に任せ、米軍は後方支援に徹することになります。更に自衛隊が不利になると撤収することになります。これが普通の人が考える現実です。これを日本政府は日米安全保障条約に基づき米軍が助けてくれると信じ込もうとしています。
ロシアのウクライナ侵攻をめぐり共産党の志位委員長が「仮にプーチン氏のようなリーダーが選ばれても、他国への侵略ができないようにするための条項が憲法9条だ」とツイッターに投稿したことに関し、安倍元首相が「空想にとどまっていて思考停止だ」と批判したという報道ですが、日本政府も似たようなものです。と言うより思考停止は日本人の特性でもあります。1990年からのバブル崩壊後日本経済が停滞したままなのは、日本人が思考停止状態にあるからです。これは第2次世界大戦時「天皇陛下万歳!」と言って戦死した多くの日本人と同じです。
ロシアのウクライナ侵攻によって西欧諸国が危機感を持つのと同じくらいに日本も危機感を持つ必要があります。西洋諸国が一体としてロシアに対抗すれば、ロシアは極東から侵略を開始します。そうなると次は日本の北海道がターゲットになるのは明確です。ウクライナに展開しているロシア軍の多くは極東軍から集められていると言われており、これは日本の軍備が手薄なためにできることです。もし日本が強力な軍隊を保有していればロシアは極東軍から多くをウクライナに割けません。
ここから日本とNATOは相互補完関係にあることが分かります。日本とNATOはロシアを東西から挟撃する関係にあるのです。もしロシアがNATO諸国に攻め入れば日本がロシアに参戦する関係があれば、ロシアは東西から挟撃されることとなり、兵力を西に割けません。同時にロシアが日本を攻撃すればNATOが参戦する関係にあれば、ロシアは極東に兵力を集中することが出来ません。これはロシアへの強力な抑止力になります。同時に中国への抑止力となります。
安倍元首相の核シェア論は相互防衛条約があって初めて話し合いが出来るものであり、今の日米安全保障条約のような一方的関係ではテーブルにも乗りません。日本が出来る現実的選択は、NATOおよび米国と相互防衛条約を結ぶことです。