資産接収なら差押えロシア中銀円資産で補償を

ロシアのウクライナへの軍事侵攻を受けてトヨタ、日産、いすゞなどがロシア工場の停止を決めています。ロシアのプーチン大統領は、3月10日の閣議で「生産拠点の閉鎖には断固とした対応をしなければならない」「外部による管理を導入した上で、企業を希望者に譲渡する必要がある」「この問題に対して法的解決策を見いだすだろう」と語ったということです。そして外国資本が25%以上を占める企業がロシアでの事業を停止する場合、裁判所の判断で外部管理を導入できるようにする法案が国会に提案されているということです。この法案が成立すればトヨタなどの工場は事実上ロシアに接収されることになります。その損害は数千億円に達すると考えられます。

これをトヨタなどの民間企業の自己責任とするのは酷であり、日本は国として損害を補償する方法を検討する必要があります。とは言っても現状そういう法制度は無いと思われます。しかしこれはロシアにいう国による不法行為であることを考えれば、ロシア資産から補償できることになります。そういえば日本はロシア中央銀行が日銀に預け入れている円資産を差し押さえているはずです。その額約3兆8000億円と報道されています。これがトヨタなど資産が接収された企業への補償原資になると思われます。

それにしてもこの接収は不思議です。トヨタなどの工場をロシアが接収しても、部品が入らないから自動車は生産できないし、販売された自動車も部品不足で動かなくなるものが出てくると考えられ、この接収は、ロシアにとって全くメリットがないように思われます。航空機リースについても三井住友フィナンシャルグループや住友商事から成るコンソーシアム傘下のSMBCアビエーションキャピタルがリース35機の契約解除を通告したようですが、これも機体を返さないと言われています。そうなると当該リース会社は相当の損害が出ます。これもロシア中央銀行の差押え資産から補償してやればよいと思います。

今回日本としては珍しく迅速にG7諸国と協調してロシア中央銀行の日銀預入円資産を差し押さえたことが日本企業の損失補償に役立ちそうです。