マイナス預金金利より預金税を導入すべき
マネーポストwebに日本にも預金にマイナス金利が課される時代が目前に迫っているという記事がありました。欧州諸国ではすでに広く行なわれているようです。ドイツでは最大手のドイツ銀行とコメルツ銀行が2020年に新規顧客が一定以上の預金を預ける場合は年0.5%のマイナス金利を取り始めたのを皮切りに、他行にも急速に拡大、今年1月初めの時点で同国内の半数近い555行がマイナス金利を導入しているとのことです。マイナス金利を取られるのは預金額が2万5,000ユーロ(約320万円)を超える部分といった基準を設けるケースがほとんどですが、基準額はどんどん引き下げられており、最近では基準を設けずに預金1ユーロからマイナス金利を課す銀行もでているということです。同様の動きは他国にも広がり、北欧の大手ノルデア銀行はデンマークでの預金にマイナス0.75%の金利を取っているということです。
この原因は2014に欧州中央銀行(ECB)が金融機関がお金をECBに預けた場合、ECBに金利を払わせることにしたことです。これによってECBは、銀行が集まった預金をECBに預金せず貸付に回し、銀行貸付が増える期待したのです。しかし結果はそうはならず、銀行は預金の運用先がないことから、預金の増加を防ぐために、顧客が銀行に預金をすれば顧客から利子を取るというマイナス預金を導入しました。
日銀も2016年にマイナス金利政策を導入しましたが、これは銀行が日銀に預ける預金の全額ではなく、基礎残高(0.1%の金率が付く)とマクロ残高(金利0%)を超える残高である政策金利残高のみに対してであり、これまでマイナス金利が実際に適用されたことは制度ができた当初を除きなかったようです。これが今年1月、三菱UFJ銀行の2021年12月中旬から2022年1月中旬までの当座預金が適用条件に該当し、マイナス金利が適用になったということです。マイナス金利が適用となる当座預金は数千億円で、同行が日銀に支払う金利は数億円になるとのことです。
これがあって日本の銀行も預金にマイナス金利導入かとの話題になったようです。日本の銀行は日銀のマイナス金利を回避するため日銀預入当座預金を上手にコントロールしており、三菱UFJ銀行のケースは事故と言えるようなものではないでしょうか。そうだとすれば日本の銀行が預金にマイナス金利を付す時代はもう少し先か、あるには最近の物価の上昇および金利の上昇を見ると、杞憂におわるような感じもします。
私がここで提案したいのは、銀行の預金を減らすためなら預金にマイナス金利を付すことに代えて、預金税を導入することです。預金のマイナス金利は銀行の収益になりますが、預金税は国庫の収入になります。日本は巨額の税収不足(2022年度は予算106兆円で税収は65兆円。41兆円の税収不足)の状態であり、預金税は税収の増加に繋がります。日本の家計の預金総額は1,092兆円、企業の預金総額は319兆円(2021年12月末。日銀資金循環統計)となっており、これに1%の預金税を課すと、約14兆円の税収となります。
預金に課税するとは何事か、という意見も多いと思いますが、日本では高齢化が進み、富が高齢者に集中しています。その結果個人預金の多くは、高齢者のものとなっています。高齢者は消費意欲が低調であり、これが消費不振の原因となっています。消費が活発なら、消費税および所得税が増えるのですが、高齢者が預金をしたままでは税収は増えません。さらに有価証券などを含む金融資産でみれば、個人が約2,000兆円、企業が約1,280兆円保有していることになっています。ならば、金融資産に例えば1%課税すれば約33兆円の税収となります。消費税の税収が約20兆円ですので、消費税10
%を廃止し金融資産税1%を導入した方が税収が多いことが分かります。それに加え物の売買が活性化し、経済が活性化します(個人所得税、法人税が増える)。資産に課税することは、不動産や自動車などで行われており、金融資産に課税されていない現状がおかしいとも言えます。それに消費が振るわず、金融資産だけが膨らむ日本では、国の税収上金融資産課税は不可避です。本気で検討する必要があると思います。