原発テロ警備は民間武装警備会社が行うべき

ロシアがウクライナ侵攻でチェルノブイリ原発やザポリージャ原発を占拠したことで、日本の原発立地自治体の不安が高まっています。原発が15基立地する福井県の杉本知事は岸防衛大臣に原発周辺に自衛隊を配備するよう要請したということです。原発は電力会社の設備であるため、本来電力会社で安全を確保するものです。しかしテロに対しては、現状日本では警察が対処することになっています。警察では機動隊内に原発警備の担当者を置いていることが多いようです。この中で福井県は2004年に原子力関連施設警戒隊という専従部隊を設置し、2020年4月にはこれを原子力施設警戒隊と改めています。福井県としては、ウクライナでの状況を見て、自衛隊が近くにいていつでも駆け付けられる体制が不可欠と考えたようです。

このことに関して岸田首相は、福井県の専従体制を全国に展開することを検討すると述べ、自衛隊の配備には消極的なようです。一方3月23日、自民党の高市政調会長は「自衛隊が行うことは現行法でできない。自衛隊法に新たな任務として追加しなければならない」と述べ、自衛隊法を改正し、原発警備を任務に加える意向を示したということです。

高市政調会長は、昨年10月の自民党総裁選においは良く検討された政策でネット民の高い支持を得ましたが、ウクライナ問題においては思い付きの発言が多く、防衛問題はこれまであまり検討してこなかったように思えます。例えば、安倍首相が提案した核共有の議論については、「今の自衛隊法ではできない」と述べ、核共有ではなく米軍の核を日本へ持ち込むこと、即ち日本に配備することを認めるべきと述べています。原発警備は今の自衛隊法では出来ないから、自衛隊法を改正すべきと述べながら、核共有では自衛隊法を根拠にできないと述べているのです。これは勝手な論法です。原発警備を自衛隊の任務に加えるべきという高市政調会長の発言もやはり検討不足だと思われます。

原発は電力会社が運営しており、原発の安全性について電気事業連合会の池辺会長は、3月18日の記者会見で日本の原発でウクライナのようなことが起こった場合の対応について聞かれて、「警察や海上保安庁などと連携して通常のテロには対応できる」、また「戦争やミサイルにどう対応するかは外交、防衛の問題」であり「現在の安全基準を満たせば問題はない」との認識を示したということです。これに対してネットでは、「根拠不明」「能天気」「また福島原発事故の二の舞」などとの批判が渦巻いています。電力会社経営者の思考停止状態は、福島原発事故の後も治っていないようです。この発言の中で池辺会長は、「警察や海上保安庁などと連携して通常のテロには対応できる」「現在の安全基準を満たせば問題はない」と言っているのですから、原発の警備は電力会社が責任を持って当たる必要があります。テロに対しても電力会社で武装警備員を雇い対応すべきです。例えば原発を持つ電力会社で民間武装警備会社を作ります。それは自衛隊経験者を中心とした警備会社で、テロに対応できるだけの武器装備を持ち、自衛隊と連携して定期的な訓練を行います。民間版自衛隊とも言える存在です。こうすればこの費用は電力会社負担ですし、電力会社が責任を持って安全を確保するする体制となります。自衛隊の出番は本当にテロが起きたとき、あるいは戦争になったときだけです。この民間武装警備会社は戦争となったときには自衛隊の補完にもなります。このためには法整備が必要であり、これこそ高市政調会長の仕事です。

そもそも戦争状態でもないのに民間施設である原発を自衛隊に守らせると言う発想は、自衛隊の本来任務を忘れ、自衛隊を便利屋扱いするものです。安全保障問題が緊迫してきた今必要なことは、災害派遣業務など自衛隊の本来任務とは違う業務を自衛隊から取り除き、自衛隊が国防に専念できる体制を作ることです。