OJTはパワハラになるリスクをはらむ

最近職場でパワハラで訴えられるケースが多くなっています。私たちの現役時代を考えると今ならパワハラで訴えられていた人が多いと思われます。それくらい部下を怒鳴る上司がたくさんいました。怒ることは上司の仕事の一部のようになっていました。

会社に入って先ずパワハラが可能となるのは、新入社員のOJT担当になったときです。日本の会社の場合、業務知識はOJTによって身に着けるので、OJTを通過しないと実質的正社員にはなれません。また大学は同世代社会であるため、新入社員は上下関係のルールを知りません。そのため先輩のOJT担当者の言うことに表面上は素直に従うのですが、上下関係に反発し、思ったような効果がでません。そのため上下関係が確立するまで度々怒るまたは威圧することとなります。それでも多くの場合新人社員が辞めることにならないのは、OJT担当者が飴と鞭を駆使し、新入社員を懐柔しているからです。たまにドラマなどで職場の後輩が先輩に対して「あのとき先輩から怒られながら仕事を教えてもらったから今の自分がある」などと話す場面がありますが、こんな場面を期待して多くのOJT担当者は怒っていました。多くの場合OJT担当者にOJT手当が支給されているわけではなく、OJTは割の合わない仕事です。

私がOJTで最初担当したのは四国のある県では有名な企業グループの御曹司の新入社員でした。彼は明るく、前向きで、決してめげないなど、企業グループの御曹司らしい性格を持っていましたが、我儘に育っていたのでなかなか言うことを聞かず、私は最初の頃よく机を叩いて怒っていました。今ならパワハラになっていたかもと思うやり方でした。半年もするとお互い気心が分かって来て、OJTも順調に進みだしました。そして3年後には同期の中でも問題児だった彼は、同期トップクラスになりました。私はそれが評価されて、その後社内の他の部署から移動してくる社員のOJT担当をするはめになりました。他の部署からの移動者の場合、年齢も高く他の業務経験者であることから、新入社員と同じようなOJTはできません。だから怒ることも無かったし、彼らにパワハラをしたという印象はありません。

もう一つあれはパワハラだったかな、と思い出すのは、入社後数年経っていた若者を部下に持ったときのことです。彼は、人柄はとても良かったのですが、理解力と記憶力がとても悪く、同じミスを何度もやりました。それも前日夜に修正したミスを翌日朝にまたやらかします。そのとき私は、これは直しておかないと彼は会社に居れなくなると思い、新入社員のOJTと同じように指導しました。今思うとあれはパワハラだったかも知れません。彼との間では問題になりませんでしたが、周りにはやり過ぎとの声もあったようで、その後私は体よく昇格した形で、ラインを外されてしまいました。その後暫くして社長から「君が指導した若者が君と一緒にやりたいと言っているから、またラインを持たないか」という話がありましたが、もう部下を持つのはこりごりだったので、辞退しました。そこから退職するまで独立した専任担当者でしたので、パワハラをしたことは無いし、されたこともありません。そういう意味ではラッキーな会社員人生でした。それでもパワハラ(部下を怒った思い出)は退職後思い出すので、やらない方がいいと思います。