熊本県立大学の学部名には知性が感じられない

熊本県立大学は熊本の大学で序列2位の大学です。1位は熊本大学で不動です。熊本県立大学は熊本で熊本大学には行けないけれど、公立大学に行きたい高校生が行く大学になっています。偏差値は42.5~52.5となっており、受験者の真ん中から少し下の学生が入学しているようです。私が熊本にいた頃は女子大学でした。これが平成6年(1994年)に男女共学の熊本県立大学に組織変更になったようです。女子大学から始まったことから、学部は学芸学部から始まり文家政学部に改組、これを文学部と生活科学部に分割、総合管理学部増設、生活科学部を環境共生学部に改組などにより、現在の3学部(文学部、総合管理部、環境共生学部)の体制となったようです。

私が熊本県立大学に興味を持ったのは、2012年理事長に五百旗頭(いおきべ)眞氏が就任されたときでした。五百旗頭氏はその前防衛大学校校長を務められており、日本でも著名な政治学者でした。五百旗頭氏程の経歴があれば防衛大学校校長の後は著名大学の学長職や政府系団体の要職に引手あまただったと思われます。それが全国的には無名な熊本県立大学の理事長に就任されたと知って、ちょっと不思議な感じがしました。後で知ったところによると、友人だった蒲島熊本県知事から理事長就任を要請され、断れなかったようです。私は五百旗頭氏の理事長就任により熊本県立大学は大きく変貌するのではないかと期待しました。というのは同じく政治学者で東京外国語大学学長を務めた中島嶺雄氏が、秋田県が作った国際教養大学の初代理事長兼学長に就任され、その後国際教養大学は日本トップクラスの外国語大学になったからです。五百旗頭氏は中島氏に負けない経歴をお持ちであり、熊本県立大学を国際教養大学に負けない大学に育てることができると思われました。2018年に五百旗頭氏は理事長を退任されましたが、県立大学の陣容に変化はなく、期待外れでした。

五百旗頭氏の次の理事長には元政策大学院大学学長で文化功労者にも選出されている著名な政治学者白石隆氏が就任されています。白石氏も蒲島知事の友人関係からの就任のようです。このように熊本県立大学は理事長に2代続けて著名な政治学者を招聘しており、理事長の知名度では公立大学トップクラスです。しかし大学の評価では下位のままであり、著名な理事長就任によって上昇した様子はありません。理事長の評価と大学の評価が著しく乖離しており、何のためにこのような著名な学者を理事長に招聘したのか蒲島知事の意図が不明ですし、これに応えて理事長に就任した2名の方の意図も不明です。やはり理事長を引く受けるのなら大学を大きく変えて欲しいものです。

それよりも不思議なのは県立大学の学部です。文学部はまだ分かりますが、環境共生学部と総合管理部は意味不明です。環境共生学部は今流行りの環境と共生する方法を学ぶ学部のような気がしますが、総合管理部となると大学の管理部門のことかと思ってしまいます。学術的なことを学ぶ大学の学部名にこれはないと思います。それに総合という言葉は、学問の専門性を否定する言葉であり、外部から専門性がないように思われてしまいます。企業ならこの学部名の卒業生は先ず採用しません。このように県立大学のこの2つの学部名は企業のニーズ合致した学問を授けているようには思えず、また深い専門性も感じられないことから、学生が希望して入学すると思われません。

これは県立大学が熊本女子大学の伝統を引きずっていることから生じており、もっと今の熊本に求められる人材を養成する専門学部に改組した方が良いように思われます。例えば総合管理部を「コンピュータサイエンス学部」に改組し、日本有数のIT人材養成を目指すことが考えられます。

日本の大学で3番目に学生数が多い大阪公立大学の誕生や秋田県の国際教養大学の躍進などで公立大学でも国立大学に負けない大学が誕生しています。熊本県立大学もこれらの大学に負けないような大学を目指して欲しいものです。