自治体は人口1万人以上とすべき
今年4月8日、山口県阿武町で住民税非課税の463世帯に1世帯当たり10万円振り込まれる予定だった国からの給付金が、1人に全額の4,630万円振り込まれ、振り込みを受けた世帯主が返還に応じないという事件が起きました。
振り込み依頼書を作成した町の職員は、今年の4月に採用になったばかりだったということですが、この場合上司はしっかり確認する必要がありますから、本件が起きた最大の原因は、上司の確認ミスということになります。阿武町は人口約3,000人と言うことであり、このような地方の小さな町では、住民はどこかで繋がっており、誤入金があったら速やかに返還するのが普通です。今回も振り込みを受けた住民は、当初返還すると言っていたようですが、その後「返せない。罪は償う」と変わったようです。どうもこの住民が移住であることに問題化の一因があるようです。移住者で住民税非課税ということは、移住後の収入は少ないと言うことであり、訳ありの移住だった可能性があります。例えば、都会で借金を返せなくなり、阿武町に隠れ住むように移住したことも考えられます。この場合、4,630万円は借金の返済に回された可能性があります。そうだとすれば、法律上は返還義務があっても、事実上返還不能となる可能性が高くなります。そうなれば、この住民は刑法上の横領罪で逮捕され、服役することになると思われます。そして戻ってこない4,630万円については、振り込み依頼書を作成した職員や上司、町長を中心に町職員で返還するというシナリオが考えられます。小さな自治体でたまに聞くシナリオです。
今回の事件を教訓に検討すべきことがあります。それは、地方自治体には業務を適正に執行できる最小規模というものがあり、人口基準が必用ではないかということです。全国には人口3,000人未満の自治体が179あります(2021年10月1日現在)。最小は東京都の青ヶ島村で175人となっています。人口100人台の自治体が36もあります。これらの自治体は運営費も少なくなりますから、人口の多い自治体とは似ても似つかない運営状況だと思われます。義務教育にしても生徒数が少なく、満足な教育が提供できないでしょう。業務のデジタル化など出来るはずがありません。
昨年デジタル庁が発足し、都道府県にもデジタル化推進組織が置かれており、今後自治体業務のデジタル化が進むと思われます。この結果、全国の自治体の業務の標準化が進み、どこでも画一的な行政サービスが受けられるようになります。そうなると小さな自治体は、大きな自治体の支所で十分ということになります。もう自治体の最低人口を例えば1万人に制限する時期に来ていると考えられます。今のように小さな自治体の存続を許せば、今後も阿武町のような事件が必ず起きます。