日銀保有国債、最終的には銀行が処理する
日本銀行の2022年4月30日の資産状況を見ると、国債が533兆円となっています。これの購入資金には、当座預金562兆円が充てられています。当座預金は、銀行を中心とした金融機関が預金の払い戻しや取立てなどに備えて預金の一定割合(預金ごとに0.05~1.5%)を日銀に預け入れることが法定されている預金準備金と銀行が銀行間や政府、企業などとの決済のために預け入れておく資金の合計で、原則無利子となっています。日銀はこの無利子の日銀当座預金で国債を購入して運用していることとなります。日銀がこれほど国債を購入するようになる前までは、銀行が集まり過ぎた預金の運用として国債を購入していましたが、日銀が横取りした格好です。日銀が日銀当座預金額一杯まで国債を購入するまでは、日銀当座預金に利息を付けながら運用できない部分がありましたから、日銀は損をしていたことになります。そういうことを考えると、日銀当座預金による国債の購入は、日銀にとって良い資金運用と言えます。
しかしコロナ対策で国債発行額が増加し、2020年153兆円、2021年度112兆円となり、2021年度末の国債残高は、ついに1,000兆円を突破しました。2022年度予算では、税収見込み額が65兆円、赤字国債が37兆円となっていますので、1,000兆円の国債残高については、返済の目途はないことになります。
日銀が購入した国債についても、返済される可能性は現状ありません。日銀の国債購入原資は日銀当座預金であり、銀行預金が減らない限り、日銀当座預金額の減少はなく、日銀が日銀当座預金を銀行などに返還するための資金不足に直面することはありません。しかし将来日銀当座預金の返還が必要になれば、国債を渡す(現物支給)こともありえます。国債は税金で返済されることが信用の源泉であり、それが将来不可能となると分かっていれば、経理上手当をしておく必要が出てきます。
これは日銀保有の国債が償還不能となれば、その購入資金である日銀当座預金が返還不能となり、銀行がこの損失を負担するということです。こう考えると銀行は、日銀に差し入れ、日銀が国債の購入に充てていることが明確な日銀当座預金の一定割合については、将来の返還不能に備えて引当金を積むのが妥当ということになります。日銀の信用ランクと共に検討が必要です。