NHK職員有志が発表すべきはスクランブル化移行プラン

NHK職員有志が「文藝春秋」6月号で「前田会長よ、NHKを壊すな」と題したレポートを発表したということです。レポートの中で職員有志は「NHKとは受信料で成り立つ、国民にとっての共有財産であると信じています。公共放送であるNHKは、決して国のものではなく、職員、前田会長の所有物でもありません。このまま前田会長による身勝手な改革を進めれば、NHKは必ず崩壊します」と述べていると言うことです。ここでまず重大な思い違いがあります。国民にはNHKを共有財産と言う意識はなく、わけもなくお金を払わされる憎悪の対象です。見もしないのに契約を強制する、更に毎月2,000円を超える料金を徴収するのですから当然です。それに国民の多くはNHKの崩壊を切望しています。出だしから認識が間違っていますから、このレポートが国民の共感を得られるはずがありません。

職員有志によると現在NHKでは、若手・中堅職員が次々と退局しており、「ついこの前も将来を嘱望されていた女性記者が、今の状況に嫌気がさしてヤフーに転職してしまいました。ネット業界にうつったり、商社や不動産など異業種に飛び込んだり。前田会長のもとでは未来が描けないとNHKに見切りをつけているのです」と言っていますが、この理由も手前勝手なものです。ブラタモリのアシスタントを務め人気者となった近江友里恵アナも三井不動産に転じましたが、あれは職業選択を間違っていたため修正しただけです。また前述のヤフーに転じた女性記者もそうだと思います。但しそれらの背後にある共通の大きな理由は、NHK受信料が国民の憎悪の対象になっていることです。そのためNHK職員であることに誇りが持てないのです。もし私がNHK職員であったら身分を隠すと思います。分かっていたら陰で悪口を言われているように思うし、いつ面と向かって悪口を言われるか分かりません。職員の退職や転職に共通の理由を求めるとすれば、ここに理由を求めるべきであって、前田会長の改革に求めるべきではありません。NHK会長の任期は3年であり、前田会長の任期は来年までですから、NHKを辞める必要はありません。

このレポートを発表した職員有志の不満は、自分らが制作に携わってきた番組が次々と打ち切られていることにあるように思われます。このレポートでも

「前田会長は『会長特命プロジェクト』と呼ばれる直轄チームを立ち上げ、改編を担うはずの編成局を差し置き、番組の打ち切りを検討。長年愛されてきた番組が会長とごく少数の人間によって潰されています。 『ガッテン!』や『バラエティ生活笑百科』など、長寿番組が突然の打ち切りとなり、職員の心を挫いています。27年続いた『ガッテン!』は最近も10%を超える高視聴率の番組です。現場のスタッフは会長に『せめて不定期で放送させてください』と食い下がりましたが、前田会長が理解を示すことはなかった」と書くなど、不満の強さが伺えます。更には「紅白歌合戦」を持ち出し、「『紅白』も打ち切りになる方向で進められています。すでに前田会長は執行部に『終わらせる』と話しているそうです。昨年も前田会長による激しい介入があり、紅組、白組の対抗形式を廃止するよう指示。抵抗した現場は苦し紛れに『カラフル特別企画』を入れていました」 と書き、紅白不評の原因を前田会長に押し付けています。前田会長は取材に対し「個々の番組に直接指示することはない」紅白打ち切りの話については、「番組全部を見直すだけで、変えるかもしれないが、やめるとまでは言っていない」と答えているということです。前田会長はNHKより遥かに巨大な組織であるみずほファイナンシャルグループの社長を務めており、自分の権限と責任は良くわきまえています。番組内容への介入は、以前森下経営委員長で問題になっており、同じ轍を踏むはずがありません。ここはこのレポートを発表した職員有志が前田会長の印象を悪くするために書き連ねたデマと思われます。

これまでNHK会長はお飾りで、NHK職員の意のままに動いてきました。その結果、国民の憎悪の対象であるNHK受信料は、国民の公平な負担という掛け声のもと600億円以上の費用を掛けて徴収が強化されてきました。これはコスト・パフォーマンス的には割に会わないことは誰でも想像がつきます。それを続けてきたのは、この費用が受信料収入約7,000億円を使い切るのに都合のよいまとまった金額だったからです。この4月前田会長はこの大部分を占め、国民の評判が悪かった本件業務委託を中止し、この担当部署も廃止したようですが、英断と言えます。

英国では保守党政権が2027年度にBBC受信料を廃止することを公表しました。これに対してBBCは早くからこれを見越し、ネット放送局への移行準備を進めていると言われています。職員有志が発表すべきは、前田会長に対する不平不満ではなく、BBCのようなネット放送局への移行やスクランブル化のプランです。