次の日銀総裁も財務省OB

安倍元首相が講演で「日銀は政府の子会社」と述べたことがマスコミで取り上げられたことから、日銀の信用が揺らぎ始めています。民間銀行は、預金を集め、それを貸し付けて、その利鞘を収入として生存していますが、日銀の場合、この仕組みが良く分かりません。どうも銀行が法的に預けることとなっている当座預金を原資として、資金が不足している銀行に融通して利鞘を得ているようです。これが本来の日銀の営業活動ですが、現在ではこの当座預金約560兆円(2022年4月末)で約530兆円の国債を購入しており、これが本業のようになっています。日銀法5条では、日銀が財務省発行の国債を直接引き受けることを禁止していることから、日銀保有の国債は市場で購入したものです。直接引き受けが許されず市場からの購入がなぜ許されるのかというと、市場からの購入の場合、その前に国債の引受人や引受人から購入した人(投資家)が居るということであり、国債が市場で消化できることが担保されているためと考えられます(日銀の直接引き受けは市場で消化できない場合に行われる)。こういう意味では、日銀が国債を市場から買入れ保有することは、日銀法にも違反しておらず、かつこれにより国債に回っていた市場の資金を、投資や融資に向かわせると言う日銀本来の金融政策と考えることができます。

一方2021年末で国債残高が1,000兆円を超えたことや今年の予算107兆円の原資は、税収64兆円、赤字国債37兆円であることを考えると、1,000兆円の国債が返済される目途はなく、いずれ償還不能部分が出て来ると考えられます。世界の先進国では、GDPに占める国債の割合は100%前後となっていますが、日本のこれは200%近くになっています(GDPは約530兆円)。これから国債残高1,000兆円の約半分の500兆円は償還不能であり、この部分を日銀が保有しているとも考えられます。日銀が保有すれば、日銀は「政府の子会社」であることから、償還を請求することはなく、いざとなれば日銀券との相殺や財務省との混同(親子関係)の理論で世の中から抹消することもできます。その間も日銀保有国債に国から支払われる利息は、日銀の必要費用(経費と配当)を除き国の納付されることとなっており、金利が上昇したら国の収入も増加する仕組みになっています。

これを見ると日銀は国の財政活動の一部に組み込まれていることが分かります。財務省から市場の国債量の調整を委託され、償還不能にならないように一部は塩漬け状態にしているとも言えます。

この状態は、金融調節という日銀本来の機能を逸脱しているとも言え、心ある日銀プロパーには耐えられない状況と考えられます。そもそもこういう状態になったのは、財務官僚であった黒田氏が日銀総裁に就任したからです。黒田氏にとっては、金融調節機能よりも財政調節機能の方が重要だったことになります。

黒田総裁の任期は来年3月までとなっていますが、日銀にこのままの役割を続けさせるとなると、次の日銀総裁は日銀OBでは不安であり、財務省OBが就任すると考えられます。今後この状況の改善は考えられないことから、日銀総裁のポストは財務省OBの指定席になりそうです。