歯の健診義務化より歯学部の定員半減

政府が6月上旬にまとめる「骨太の方針」に、全国民に毎年の歯科健診を義務付ける「国民皆歯科検診」の導入に向け検討を始める方針を明記することが分かりました。歯の健康を維持して他の病気の誘発も抑え、医療費全体を抑制するためとなっていますが、これは6月22日告示の参議院選挙で日本歯科医師会の支援を期待した選挙対策であり、歯科医過剰で経営が苦しい歯科医院の救済策です。

2020年の歯科医数は107,433人、人口10万人あたり85.2人となっています。一方政府は1982年に人口10万人あたり歯科医50人を目標とすることを閣議決定しました。そのため歯科医を減らすため国立大学歯学部の定員を減らしましたが、私大歯学部は減らさなかったため、歯科医は余り減りませんでした。そもそも私大歯学部が増えたのは、1960年代から1970年代にかけて歯科医不足が叫ばれ、田中内閣の 1県 1 医大構想とも相俟って一気に歯学部・歯科大学が4倍近くも新設され、その結果歯学部定員が約1,100人から約3,500人に増加したためでした。この際人口10万人あたり歯科医50名が新設の基準となったのですが、50名を超えるのに10年もかからないほどの過剰な新設を認めてしまいました。 2000年頃よりは国家試験の合格基準を上げて歯科医の増加を押さえようとしましたが効果がなく、さらなる基準の引き上げを検討しているようです。このように歯科医院の経営問題は歯科医過剰が原因であり、歯学部定員を削減しないかぎり解決しません。

あるデータによると2022年1月の全国コンビニ数は5万5,956店で、2021年11月の歯科医院数は6万7,886施設となっており、歯科医院のほうが1万以上も多くなっています。これに対して虫歯の減少により歯科受診者は減少しているため、歯科医院の経営が苦しくなるのは当然です。歯科医の平均年収は2019年の調査で約564万円となっており、同時期の医師の平均年収約1,100万円と比べると約半分であることがこのことを物語っています。

これらの結果、先ず歯学部入学者の学力低下が著しくなっています。ある資料によると12の国公立大学歯学部は偏差値57以上であり、まずまずの学力の学生が集まっていることが分かります。一方私立大学歯学部は17学部のうち10学部が偏差値50未満となっており、最低は34.7になっています。これから言えることは、現在歯科医の相当数は低学力であり、歯科業界は全業界の中でも低学力業界になっています。国家試験に合格しているからいいではないかという考えもありますが、国家試験は出題内容が限られており、過去問を繰り返し解いていれば合格できます。偏差値が低い私大歯学部の場合、5,6年生から国家試験に向けた対策講座を設けて過去問を繰り返し解かせていると思われます。従って国家試験合格は一定の暗記はしたという証拠にしかなりません。大学歯学部の場合、座学が中心で治療の実技指導は殆どないため、ろくな治療技術もないまま歯科医になって行くことになります。歯学部卒業後歯科医院で研修医として腕を磨くことになりますが、治療に行けば分かる通りベテラン歯科医がつきっきりで指導するわけではないので、数をこなして我流の技術を磨くことになります。歯科医は技術職であり学力は関係ないのでは、と考える人も多いと思いますが、大いに関係があります。高学力者は高みを目指しますが、低学力者は高みを目指さないのです。だから高学力と低学力の差がついているのです。私も歯科医は技術職であり、低偏差値大学卒というのは関係ないだろうと考え、昨年ある低偏差値私大歯学部卒のベテラン歯科医のインプラント治療を受けました。その際インプラント治療した上の歯とその下の歯の間に5ミリの隙間がある(ちゃんと咬合していない)にも関わらず、知らんぷりして治療を終わらせようとしました。私の抗議でやり直しとなりましたが、やはり低偏差値私大卒の歯科医は志(モラル)が低いなと思いました。中には低偏差値私大歯学部卒の歯科医でも立派な人はいると思いますが、大方この認識で間違っていないと思います。現在町にはこんな低偏差値歯科医が溢れており、嫌な思いをされた患者も多いと思います。こんな中で歯科健診の義務化などとんでもありません。先ずは歯学部定員を半減し、低偏差値歯科医が生まれないようにすることが必要です。やはり歯科医の偏差値は最低50以上は必要です。