バイデンが世界を不安定にした

5月22,23,24日の日程で米国のバイデン大統領が来日しましたが、日本国内ではあまり盛り上がらなかったように思われます。それは日本より先に韓国を訪問したことが面白くないという日本人の感情もありますが、ロシアのウクライナ侵攻の際米国がこれを阻止できなかったことから、バイデン大統領は当てにならないという認識が日本人に広まっていたからのように思われます。やはり米国大統領の日本訪問が注目されるのは、米国が守ってくれるという期待があるからでからであり、今はその期待が剥離していると思われます。一方では米国の核の傘が必要であり、何とか表面だけでも米国を繋ぎ留めておく必要があることを日本人は理解しており、静かな歓迎になっていたと思われます。

これはバイデン大統領も感じたようで、5月23日日米首脳会談後の共同記者会見で、「中国が台湾を侵攻した場合、米国は軍事的に関与するか」という米メディアの記者の問いかけに、「イエス。それが我々のコミットメントだ」と応じて見せました。これまで米国は台湾有事への介入を明確にしない「あいまい政策」を採っており、政策転換とも取れる重大発言でしたが、翌24日「中国が台湾に侵攻した場合はアメリカ軍を派遣するのか」と問われると「政策は全く変わっていない。きのう発言したとおりだ」と訳の分からない発言をしています。これで世界ではバイデン大統領は信頼できないという評価が確定したように思われます。

これは韓国でも同じであり、韓国は今後米軍との共同演習を増やすなど米国と関係強化を表明していますが、実際は、米国は期待できないと考えて米国との軍事演習を通じて自国の防衛力を強化する動きと言えます。

これはこれまで米国に安全保障を委ねていた世界各国の共通した動きでもあります。欧州では米国でなく英国、フランス、ドイツがNATOの中心となって、欧州の安全は欧州で守ると言う動きとなります。こうなると米国は世界の中心国の地位を失うばかりか中国、ロシアに対する西側中心国の地位も危うくなります。日本も米国との関係は維持しながらNATOやオーストラリアなどと多方面の同盟関係を強めることになると考えられます。

ロシアのウクライナ侵攻の最大の動機は、2021年8月31日に米軍がアフガニスタンから完全に撤退したことです。アフガン撤退はトランプ大統領の時代から言われていましたがバイデン大統領になりこれを急ぐためタリバンに全面的に譲歩しました。その結果米軍撤退が決まると息を潜めていたタリバンが盛り返し、あっという間にアフガンを制圧しました。これを見てロシアのプーチン大統領はウクライナに侵攻を決断したと思われます。

ウクライナは1994年に核兵器をロシアに移転する代わりにロシア、米国および英国はウクライナの安全を保障するというブダペスト協定書を結んでいましたが、米国はこれを反故にしたことになります。このようにロシアのウクライナ侵攻は、バイデン大統領がもたらしたものであり、バイデン大統領もそのことを十分わかっていると思われます。そのためロシアのウクライナ侵攻を事前に何回も警告しましたし、侵攻後は武器をウクライナに提供し続けています。しかし6月10日バイデン大統領は、クライナのゼレンスキー大統領は米国の警告に「聞く耳を持たなかった」と述べ、ロシアのウクライナ侵攻の責任をゼレンスキー大統領に全面的に押し付けようとしています。これによってバイデン大統領の評価はさらに下がったと思われます。もう何を言ってもダメな状況です。

何故これほどまでにバイデ大統領がダメ大統領になったのかというと今年80歳と言う年齢にあると思われます。80歳と言えばいつ死んでもおかしくない年齢であり、戦争のような厳しい緊張状態には耐えられません。そのため負荷がかからない選択をしているように感じられます。バイデン大統領は高齢の指導者のリスクを世界に示したことになります。