日本が韓国をG8メンバーに推薦すべき
6月29~30日にスペインのマドリードで開かれるNATO首脳会議に岸田首相が出席することが決まったという報道です。6月26日~28日にドイツでG7サミットが開催されるため、ついでとも言えますが、参議院選挙の真っ最中でもあることから、思い切った決断とも言えます。今回のNATO首脳会議はロシア・中国包囲網形成の意味合いが大きく、この両国と国境を接し、領土問題を抱える日本は当事者とも言えますから、ある意味当然の決定かも知れません。それにサミットはテレビ・新聞で詳しく報道されますし、NATO首脳会議も相当取り上げられることが予想され、岸田首相にとっては選挙応援より効果的とも考えられます。これは参議院選挙の日程を設定したときから考えられていたシナリオかも知れません。
今回のNATO首脳会議には、NATO加盟国の他アジア・アセアニアから日本の他韓国、オーストラリア、ニュージーランドが参加します。オーストラリア、ニュージーランドはともに欧州からの移民が中心の国でNATOとは近い関係にありますから違和感は有りません。しかし日本と韓国は、場所的にも文化的にも欧州とは対極にある国であり、違和感が拭えません。ロシアと中国の軍事同盟は強力であり、その他の民主主義国家が束にならないと対抗できないという危機意識の表れと言えます。
アジア・オセアニアからの参加4カ国のうち最も注目されるのは韓国です。日本はG7メンバーであり、NATOの中心である英国、フランス、ドイツ、イタリアとも対等な関係にあることから、NATO首脳会議にアジアから呼ぶとすれば日本と言うコンセンサスがNATO諸国にあったと思われます。韓国については、GDP世界10位となり、世界から先進国と認められていることもありますが、ロシア・中国の同盟国である北朝鮮と国境を接し、言うなればウクライナのように立場にあることで、軍事的重要性が高まっていることが参加に繋がっていると思われます。韓国では今年3月保守系のユン大統領が誕生し、それまでの中米中立政策から韓米同盟重視の立場を鮮明にしました。これを機に5月には米国のバイデン大統領がアジア最初の訪問国に韓国を選び、韓国を西側同盟国の一員に組み込む作戦を開始しています。今回のNATO首脳会議への招待はその延長上の行動となります。米国およびNATO諸国にとっては、日本か韓国かではなく日韓両国がNATOの同盟国であることが重要です。軍事的に言えば韓国が中ロ同盟に対する第一防衛線であり、日本が第二防衛線となります。ロシアがNATO諸国に攻め入れば、同盟国として日韓がロシアに攻め入るとなれば、ロシアは極東の兵力を西に集中できなくなります。同時に中国の動きも牽制できます。このように日韓両国をNATOの同盟国に加えることはNATOにとっても、また日韓両国にとっても大きな効果があります。
これが分かれば次はG7メンバーに韓国を加えてG8にしようと言う動きになるのは容易に予想できます。韓国のGDPはG7メンバーであるカナダとほぼ同じ(約1.8兆ドル)であり、経済的には西側先進国首脳会議メンバーになる条件を満たしています。後はアジアで唯一のG7メンバーであるという地位を維持したい日本を説得するだけです。中ロの軍事的脅威がなければ日本の主張も考慮されるでしょうが、差し迫った中ロの軍事的脅威を前にすれば、日本の主張は引っ込めざるを得なくなります。そうであるなら、日本から韓国をG7メンバーに加えてG8とすることを提案し、来年の広島サミットで実現するのが得策ではないでしょうか。米国が推薦し、日本が抵抗するという構図が外交上最悪です。