女性芸能人を社外取締役にする会社は「危ない会社」
最近女性芸能人を社外取締役にする会社が増えています。最近4名の女性芸能人(アナウンサーも含む)が社外取締役に就任したという報道を目にしました。
社外取締役は会社法により2021年3月から大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)の公開会社(株式を自由に譲渡できる会社)に義務付けられたものです。これは企業統治(ガバナンス)を実効性のあるものにするためには、統治機関である取締役会にしがらみのない社外の人材を入れる必要があるという考え方に基づくものです。東京証券取引所は今年から上場企業に取締役の3分の1以上を社外取締役にするよう求めています。EUでは女性取締役の比率を3分の1以上にすることを義務化したようですが、日本政府は上場企業に女性役員の比率を10%まで高めるよう要請しています。これらの背景があり、女性芸能人の社外取締役就任増加に繋がっているようです。
しかしこれは社外取締役制度の脱法行為とも言えます。社外取締役制度は企業統治の強化を図るものであり、社外取締役はそのスキルを持った人でなければ務まりません。社外取締役の最大の仕事は不法行為や反社会的行為の防止であり、先ず企業法務に通じていることが必要です。次に重要な行為は決算書のチェックであり、会計知識が必要です。この2つは社外取締役に就任する人の最低要件だと思われます。そのため社外取締役には、弁護士や公認会計士が多く就任しています。それに他企業の経営者や取締役もこの条件を満たします。これら以外の人は正直社外取締役は務まらないと思われます。取締役会に出される資料は、決算書や契約の概要など上澄みの書類であり、不正や妥当性を判断するのは難しいものとなっています。そのためプロの社外取締役でも不正を見破れないことが大部分です。それに取締役の大部分を社長子飼いの部下が占めるため、社外取締役は取締役会で孤立無援の状態となります。そのためどれだけ使命感に燃えていてもいざその場になると発言さえできないことが多くなっています。取締役で不正に気付かず会社に損害が生じても、重過失がない限り責任を負わない、また重過失があっても損害賠償は貰った報酬の範囲内とする契約を結ぶことが多いので、社外取締役としての責任を追及され破産することはないことから、社外取締役は割の良い商売と見做されていますが、実際に問題が生じれば命がけの対応が求められる厳しい仕事です。そう考えると、これらの会社が女性芸能人を社外取締役に就任させるのには別の意図があることが分かってきます。
意図としては3つ考えられます。1つ目は広告宣伝効果狙いであり、2つ目は厳しい経営チェック逃れであり、3つ目は取締役会決議の賛成要員確保、です。多分上記4名の女性芸能人の方はこれらの意図を薄々承知のうえで就任を承諾されたものと思われます。
女性芸能人を社外取締役にする提案は、社長など会社の実権を握る人物でないとできません。そうだとすればこれらの会社はガバナンス不在のワンマン経営であり、一般投資家としては「危ない会社」と見ることになります。