原発審査に何年?廃止か再稼働か決断のとき
電力不足が叫ばれ節電の夏になっています。電力料金の値上がりもあり、電力の重要性が身に染みる今日この頃です。電力不足対策として原発の再稼働を求める声が上がっています。これも「安全性が確認された原発を再稼働させるべき」という声であり、答えになっていません。それは原発がこれまで再稼働できていないのは、安全性が確認できないからです。
東日本大震災により福島原発事故が起き、全ての原発が運転停止になったのは2011年ですから、もう11年経ちます。2022年6月時点で安全性が確認され再稼働した原発は大飯(関西電力)、高浜(関西電力)、美浜(関西電力)、玄海(九州電力)、川内(九州電力)、伊方(四国電力)の6発電所10基(定期検査で停止中の原発を含む)のみとなっています(7月14日現在稼働中が5基で、停止中が5基。政府はこの冬までに停止中の4基を再稼働させて9基の稼働体制とする計画。)ただし審査に合格しながら稼働に至っていない原発が7基あるようです。東日本大震災前に54基あった原発のうち20数基の廃炉が決定しており、審査中が10基ありますが、審査期間が長過ぎるように感じます。それは審査ができる専門家が少ないこともあるでしょうが、実際は専門家でも判断ができないからではないでしょうか。欧州や米国の原発のように地震や津波のことを考えなくてもよいのであれば、原子炉工学の知見で判断できると思いますが、地震や津波が加わると原子炉工学の知見だけでは判断できません。そのため審査員に地震や津波の専門家も加わっているようですが、両方分かる専門家がいないため、総合的判断は誰も下せないことになります。これが現在原発が再稼働できない本当の理由であり、今後解決するとは思えます。
そうならば、現在までに審査した内容で安全性をA(安全性80%以上)、B(安全性50%以上~80%未満)、C(50%未満)に分け、審査委員会としてはAのみ再稼働可と判断し、BCについては安全とは判断できないとし、再稼働不可とします。多分今再稼働している、または審査に合格している地域の原発しか再稼働できなくなると思われます。これ以上審査を引っ張ると時間切れで再稼働となる可能性が高くなり、再び地震による原発事故の再来に繋がります。
原発審査が長引いた最大の弊害は、代替電力の開発が進まなかったことです。原発が使えないと早く決まっていれば、電力会社としては代替電力として自然エネルギーの開発に力を入れたと考えられます。太陽光発電や風力発電も電力会社が本気になればもっと増えていたでしょうし、水力や地熱ももっと増えて良いと思われます。水力発電所の増設は最近ほとんど聞きませんが、雨量の増加やダム建設可能地域の増加(山間部での廃村)を考えると水力発電は日本の基幹電力になりうるように思われます。原発廃止が確定すれば電力会社はこれらの動きを活発化させます。
更にウクライナ戦争によって原発は核兵器を使わなくても使ったと同様な効果を出せる施設であることが分かりました。テロなら警備を厳重にすれば防げますが、原発の爆破を狙ったミサイル攻撃は防げません(海上または海中から低空でミサイルを撃ち込めばよい)。そうなると国防上も原発は危険となりますので、原発は存在そのものが危険と言うことになります。原発について結論を出す時期に来ています。