SBG3兆円の赤字はNAV経営の誤り

ソフトバンググループが2023年度第一四半期の決算を発表し、約3兆2千億円の赤字となったとのことです。2四半期連続で見ると約5兆円の赤字であり、2021年3月期に計上した約5兆円の黒字を2四半期で打つ消したことになります。SBGの2023年第一四半期の売上高は1兆5,720億円であり、売上高を上回る赤字がどこから出てくるのか不思議です。SBGは投資会社なので投資額はバランシートに資産(投資株式、保有株式、ファンド出資額など)として計上され、売却されたら売り上げとなります。従って第一四半期に売却された株式は約1兆5,000億円だったことになります。この株式については黒字で、株式公開後も保有している株式やまだ株式公開していない投資株式が株価や評価額の値下がりにより簿価を下回った額が約3兆円ということになります。これから言えることは現金が3兆円減ったわけではないということです。これは2021年3月期に約5兆円の利益を計上した際にも5兆円現金が増えたわけではありません。評価額の増減が決算結果となっており、現金商売をしている人からすると数字遊びのように思えるかも知れません。

ここにSBGグループの危うさがあります。孫社長は、SBGグループは21.6兆円の株式を保有しており(2022年6月30日時点)、負債が3.15兆円あるから、差し引き18.52兆円の資産超過(純資産=NAV: Net Asset Vale)だと述べています。これを全株式数で割ると1株当たり11,640円であり、現在の株価5,250円(2022年6月30日)は半分に過ぎず、安すぎると述べています。

果たしてそうでしょうか?純資産約18兆円のうち約8兆円はビジョンファンドの投資株式であり、資産性は怪しいものです。以前20兆円近くあったアリババ株式はもう約4.5兆円になっています。あとはソフトバンクの株式が約2.4兆円、アーム株式が約3兆円となっています。これを換金性で見て行けば約8兆円のビジョンファンド株式は0評価であり、換金できるのは10兆円くらいです。これだと1株当たりの純資産価格は6,500円程度です。日本の銀行の株価は、1株当たり純資産の半分程度であり、SBGの株価も3,000円程度でもおかしくありません。

こう見てくるとSBGもあまりよい会社ではないことが分かります。なぜこういうことになったかというと、ネット純資産(NAV)極大化を経営目標としたからです。投資株式は現金化して初めて安定資産となりますが、SBGの場合株式公開後も保有し続けているので、常に不安定資産を抱えることになり、今回のように資産価値が蒸発することが起きます。今回の5兆円の赤字決算はSBGの間違った経営方針(NAVの極大化)の帰結と言えます。正しい経営目標は現金(キャッシュ)極大化です。