楽天無作法で楽天銀行の上場は認められないかも

楽天の不祥事が相次いで報道されました。先ず9月2日読売新聞の電子版で、「楽天モバイルは元従業員が取引先と共謀して資金を横領した疑いがあると発表した。被害額は数十億円に上るとみられる。」と報道されました。その後朝日新聞の電子版では、「民事再生法を申し立てた日本ロジステック関係者によると、携帯電話の基地局整備をめぐって取引していた物流会社の日本ロジステック(東京都千代田区)が、楽天モバイルの元従業員が実質的に支配している京都府城陽市の法人に対するコンサルタント料などを不正に上乗せした業務委託料を楽天モバイルに請求していたとされる。水増し請求による損害は約46億円に上るという。楽天モバイルはこの不正を理由に、日本ロジの預金の差し押さえを東京地裁に申し立て、認められている。」と報道し、この事件が企業の倒産にまで発展していることが分かりました。ネットでは、「自社の社員が関与した不正で、相手先を倒産に追い込むのは行き過ぎ」という声が多く見られます(預金口座差押えは山口のご入金事件の教訓か)。

これに追い打ちをかけるように3日には、読売新聞の電子版で、「ネット通販大手「楽天グループ」の配送事業を巡り、定められた予告期間を経ずに委託契約を突然解除され、売り上げを失ったなどとして、下請け運送会社が楽天などを相手取り、約5億6000万円の損害賠償を求めて近く東京地裁に提訴することがわかった。楽天は昨年5月、事業を終了し、委託先約40社との契約を一斉に解除していた。」と報道しました。「訴状などによると、同社は2018年11月、楽天が展開していた配送事業「楽天エクスプレス」に参加し、通販サイト「楽天市場」の商品を宅配していた。契約では、契約解除は3か月前までに告知すると定めていたが、21年5月13日のオンラインでの会議で、楽天側から事業終了に伴い契約を月末で打ち切ると告げられたという。楽天は取材に、予告期間を経ずに委託先各社と契約を解除したことを認めた上で「個別に委託先と協議し、ほとんどと対応を終えている」と説明。」となっていますので、楽天側に非がある可能性が高いと思われます。契約解除は、楽天が日本郵政との資本提携を発表した日に告げられており、この報道を見て私も唐突で相手はたまったものではないだろう、と思ったことを覚えています。これを訴訟によらずに解決するためには、契約配送会社が納得する補償プランが必要です。多くの配送会社は楽天提示の補償プランを受け入れたのだと思いますが、提訴する配送会社とは協議が整わなかったものと思われます。(それでも読売新聞が「提訴した」後ではなく「提訴することが分かった」段階で報道するのは異常です。提訴しなかったらどうするのでしょう?)

9月に入って相次いで楽天に関するトラブルが報道されたのには理由がありそうです。それは楽天銀行が東京証券取引所(東証)に上場を申請しており、上場審査が大詰めを迎えていることです。楽天銀行は7月4日に上場を申請していますので、通常ならもうそろそろ承認される頃です。私はこれがなかなか発表にならないので、おかしいな、と思っていました。上場審査では申請会社や大株主が係争を抱えていないことを重視します。それは申請会社に上場後大きな係争が起き業績が悪化すると上場審査に問題があったと非難されるからです。それを知っている係争者は係争の事実を東証に報告し、上場を妨害しようとします。楽天は相当荒っぽいやり方をしてきているので、このような係争情報が多数寄せられている可能性があります。そうなると東証としては楽天銀行の上場を承認しないこともあり得ます。楽天の場合、トラブル以外にも楽天モバイルの赤字累積により本体も繰越欠損(2022年6月中間期で-522億円)になっており、楽天モバイルの中間期の損失-2,593億円を考えると、楽天本体の経営危機も考えられる状態です。そうだとすれば楽天銀行の資金が楽天モバイルや楽天に流用される可能性もあるので、東証としてはこの面でも上場を承認しずらい状況になっていると思われます。

こう考えると楽天銀行の上場は承認されない可能性があります。近々楽天銀行の上場承認ではなく、上場延期または上場申請取り下げが発表されるかも知れません。