検察と岸田政権の利害が一致したオリンピック贈収賄捜査
東京オリンッピク贈収賄疑惑の捜査が広がりを見せています。森元首相や竹田元JOC会長も事情聴取されたという報道です。この捜査はこのブログで何度か書いているように、日産元会長のゴーン氏を国際指名手配してくれたフランス検察に対する日本検察からのお返しなので、ゴールはフランス検察による元組織委員会理事高橋治之氏の訴追(東京オリンピック招致に関してIOC委員に賄賂を贈った容疑)になると思われます。賄賂を贈るための相手の選定や工作は世界のスポーツ界に通じた高橋氏でないとできないので、贈賄を差配したのは高橋氏で間違いないでしょうが、それを決裁したのは当時の竹田JOC会長と思われますから、本来なら竹田会長が訴追されるべきなのですが、検察の動きを見ていると竹田会長の代わりに高橋氏を贈賄の首謀者に仕立てる筋書きのように見えます。そのためには竹田元会長から「この件は高橋氏が担当だった」という証言が必要であり、今回事情聴取に至ったものと考えられます。竹田元会長が贈賄の全責任を高橋氏に被せるのか見ものです。
このように検察の筋書きに従って順調に進む本件捜査は、7月8日の安倍元首相銃撃事件後始まったことから、東京オリンピック開催の立役者だった安倍元首相が亡くなったことが切っ掛けと言われていますが、果たしてそうでしょうか。捜査の着手には綿密な準備が必要であり、捜査の準備は相当前から進められていたと考えられます。ゴーン事件で一緒に逮捕されたケリー被告に対して今年3月実質無罪(容疑8年のうち7件は無罪、1件のみ有罪。1件の有罪は検察の顔を立てたものと思われる)の判決が下されたことから、検察は窮地に陥りましたが、4月にフランス検察がゴーン氏を国際指名手配したことから、救われました。フランス検察が窮地に陥っていた日本の警察を救った形であり、これにより日本の検察はフランス検察が捜査していた東京オリンピック招致活動における贈収賄事件の捜査に本気で協力することを決断したと考えられます。本件は日仏司法共助により以前日本の検察も捜査済みであり、高橋氏が中心となって贈賄を行っていた事実は掴んでいたと思われますが、これは日本の法律では犯罪ではなく、またこの事実をフランス検察に提供することは日本の国益に反することから、隠されていたと思われます。日本の法律で犯罪に問える東京オリンピックスポンサー集めに関する贈収賄事件として、5月頃から本格的に捜査の準備に着手し、ターゲットはもちろん高橋氏でした。収賄罪に問うには公務員の身分が必要ですが、高橋氏は東京オリンピック組織委員会理事に就任していたことから、みなし公務員となることに着目しました。こうして本格着手の準備は整いましたが、問題は東京オリンピックは日本の国家的行事であり、それに贈収賄があったとなれば日本の評価を落とすことから、捜査の着手には岸田政権の承認を取り付けることが必要となります。安倍政権なら承認しないのは当然です。また安倍氏と岸田政権の関係が良好なら、岸田政権でも承認されなかったと思われます。ところが防衛費のGDP比2%目標を骨太の方針に明記する(安倍氏の主張)かしない(岸田政権の主張)かを巡り、6月初め安倍氏と岸田政権で激しいバトルが生じました。結局GDP比2%は明記せずに、NATO並みを目標とすると書くことに落ち着きましたが、岸田政権にとって安倍氏は邪魔な存在になっていました。安倍氏が岸田政権を脅かし始めたのは2度目であり、岸田政権は最初は桜を見る会に出席した安倍氏後援会のパティ―費用の一部を安倍事務所が立て替えていた件を警察に捜査させ、安倍氏を黙らせました。これで暫く安倍氏は大人しくしていたのですが、今年に入って防衛費目標を巡って岸田政権に圧力を掛けていました。私は桜を見る会問題に警察の捜査が入ったとき「安倍元首相のキジも鳴かずば撃たれまい」というブログで、これは岸田政権からの警告であると書きました。安倍氏が防衛費を巡り岸田政権に圧力を強めているのを見て、6月にはそのパート2を書こうと思っていました。そしたら安倍氏銃撃事件が起きたのです。もし書いていたら銃撃を扇動したとして捜査の対象になっていたかも知れないと思うとゾッとします。このように当時の安倍氏の行動は岸田政権にとって目障りであり、側近連中が排除に動く可能性がありました。それを検察は敏感に感じ取り、岸田氏側近にオリンピック贈収賄事件の捜査着手の承認を求めたものと思われます。東京オリンピックは安倍首相の最大の功績であり、この裏で贈収賄が行われていたとなれば、安倍氏の権威は失墜し、安倍氏は大人しくならざるを得ません。
このようにオリンピック贈収賄捜査は、検察と岸田政権の利害が一致した結果、6月には捜査着手の方針が決まっていたと思われます。