決裁権者が逮捕されないなら収賄罪でなく詐欺罪
東京オリンピック贈収賄事件がそろそろ大詰めに近づいているようです。検察が森元組織委員会会長から事情を聴いたという報道ですし、16日には竹田元JOC会長から事情聴取したと報道されました。この2人については検察のリーク情報に基づく新聞も控えめな書き方ですので、形式的な捜査であることが伺えます。検察は本件捜査に着手するに当たり、岸田政権の承認を得ていると思われ、条件として安倍元首相はもちろん、森元首相ら国会議員、武藤事務局長ら官僚、竹田元JOC会長は逮捕しないことの合意があったと思われます。森元首相の事情聴取は組織委員会会長として不可欠ですし、森元首相は贈賄側のアオキの青木会長から現金200万円を贈られたことが判明しており、本来なら逮捕されるのが筋です。竹田元会長の事情聴取の主眼は、東京オリンピック招致に当たって一部のIOC委員に賄賂を渡した首謀者は、竹田元会長ではなく高橋氏であるという証言を引き出すためと思われます。そもそも今回の捜査は元日産会長のゴーン氏を国際指名手配したフランス検察への日本の検察からのお返しであり、今回の捜査の最終ゴールはフランス警察による高橋氏訴追です。竹田元会長は訴追されないシナリオになっていると思われます。
今回の贈収賄事件の逮捕者を見ていると不思議なことがあります。それは収賄側での逮捕者は高橋氏1人であることです。収賄罪には公務員の身分が必要ですが、高橋氏は組織委員会理事に就任した時点でみなし公務員だったから、収賄罪の対象になるとしています(コモンズ2の深見氏はみなし公務員でもないのでむしろ贈賄側)。高橋氏は非常勤の理事であり、そもそも理事は名誉職で具体的権限はないことから、収賄罪の主体とするには無理があります。高橋氏はアオキやKADOKAWAから請託を受けてオリンピックスポンサーになる手助けをしたとなっていますが、スポンサー就任を決定(決裁)する権限はありません。従ってスポンサー就任が正式な手続きを経て権限者または権限のある機関によって決裁または決定されていれば、収賄により公平な手続きをゆがめたことにはならないと思われます。
こう考えると収賄になるためには、決裁権者が収賄していたか、決裁権者が高橋氏が収賄しており公正な手続きを逸脱していることを知っていながら決裁したことが必要となると思われます。もし決裁権者が公正な手続きに反していないと考えて決裁したのなら、高橋氏の収賄罪は成立せず、もし何らかの犯罪に問えるとすれば詐欺罪だと思われます。
ここまでの捜査ではオリンピックスポンサーを決定する権限者が全く登場せず、不思議な贈収賄事件になっています。この点からも今回の捜査は、日本の検察からフランス検察へのお返しであり、ゴールはフランス検察による高橋氏訴追に設定されていると思われます。