「みなし公務員」にならないかのチェックが欠かせない

東京オリンピック贈収賄事件では、元組織委員会理事の高橋治之氏が理事就任時点で「みなし公務員」となり、東京オリンピックスポンサー企業から受け取ったお金は賄賂であるとして逮捕されました。高橋氏は個人企業でコンサルなどの事業も行っており、高橋氏の言い分としては、受け取ったお金はコンサル料ということになります。高橋氏が理事就任時点で今後は「みなし公務員」になることを認識していれば、この身分を利用したということも言えるのでしょうが、「全く知らなかった。知っていたら理事には就任しなかった」と言っており、その通りだと思われます。そもそも理事には具体的な職務権限がなく、高橋氏のような非常勤理事は名誉職なのが常識です。従って公務員の身分を利用したのは高橋氏ではなく、検察の方と言うことになります(この事件は元日産会長ゴーン氏を国際指名手配したフランス検察に対する日本検察のお返しです)。

今回検察が高橋氏逮捕のために使った「みなし公務員」という身分を知って、私もゾッとしました。中央省庁や県の助成金審査委員を何回かやったことがあるからです。これらの委員会も公金を扱っており、審査委員はその委員の期間「みなし公務員」と言えないことはありません。かつ助成金の申請者の中には知っている人や企業も出てきます。後日検察から接待を受け審査に手心を加えて助成金が支給されるようにしたとして収賄罪に問われてもおかしくありません。審査員就任の際には就任承諾書にサインしたのみであり、詳しい規則は見ていないので、この規則に「みなし公務員」の制度があったのは分かりません。公的な団体の委員、理事、監事などに就任した経験のある人は多いと思いますが、これからは「みなし公務員」になるのかどうか、事前に確認する必要があると思われます。

ネットで調べてみると「みなし公務員」となる場合は法律にその旨明記されているようです。国立大学法人や年金機構などの独立行政法人、公的検査機関などの役職員が「みなし公務員」に当たるようです。ちょっと紛らわしいのは、日本郵政で内容証明の業務に従事する者など一部の従業員がみなし公務員にあたること、みなし公務員に当たらなくても日本たばこ産業、JR北海道やJR四国など国のお金が投入されている企業の役員や社員は贈収賄罪の対象となることです。これらの会社の社員の中には、この事実を知らない人も多いのではないでしょうか。

今後は公的団体の役員などに就任する場合は、「みなし公務員」にならないかのチェックが欠かせないと思われます。