公立学校に良い教育は期待できない
文部科学省が発表した2021年度全国公立学校教員採用選考試験の結果によると、全体の倍率は3.7%で昨年より0.1%減少し、過去最低だった1991年の倍率と並んだということです。試験区分別では小学校が2.5倍(0.1%減少)、中学校が4.7倍(0.3%上昇)、高校5.4倍(1.2%減少)となっています。手間がかかる小学校教員のなり手が減っているようです。全体の競争率が低い自治体は、富山県2.0倍、長崎県・福岡市2.4倍などで、小学校では、秋田県・福岡県1.3倍、佐賀県・大分県1.4倍など18の自治体で2倍を下回ったということです。2倍以下だと選考の余地が殆どないと言っても良いと思われます。
これに伴い公立学校の教師のレベルが低下していることが予想されます。日本の場合、小学校は約99%(生徒数の割合)が公立であり、中学校は92%、高校は約66%となります。最近は東京を中心に、中学校、高校になると私立の割合が増えています。私立中学校に通う割合が高いのは、東京25.2%、高知17.9%、京都13.4%、奈良12.8%、神奈川11.0%などとなっています(2021年度調査)。私立高校に通う生徒の割合が高いのは、東京55.0%、京都府43.9%、大阪府・福岡県41.0%などとなっています。全体的には私立学校に通う生徒の割合が高くなれば公立学校教員の採用倍率が高くなるように思われます。従って公立学校教員選考倍率低下に対する対策としては、小学校・中学校を中心に私立学校を増やすことが考えられます。
現在の公立学校は平等教育に重きを置き過ぎています。人の才能は多様であるにも関わらず、平均的な子供に合わせた教育を実施しています。本来教育の目標は子どもの才能を伸ばすことにあるべきですが、今の公立学校の教育は最低限の知識を身に着けさせることになっています。その結果真ん中以上の能力のある子供の伸びが損なわれることになっています。この弊害を防ぐためには、最低中学校からは子供の能力に応じた教育とする必要があります。それに気付いているのが東京など私立中学進学者が多い地域です。東京では学力の高い子供は殆ど私立中学校に進学しており、その結果東大や早慶などの難関大学入学者の多くを東京出身者が占める結果となっています。またスポーツでも中学校からスポーツが強い私立中高一貫校に進学する子供も増えています。大阪桐蔭や青森山田などは多くのスポーツで全校強豪となっています。この結果、今では大学入試でもスポーツの全国大会でも私立中高一貫校が上位を占めるようになり、公立高校は上位に登場しなくなっています。ここからも公立学校は制度改革が必要となっていることが分かります。
最近岩手県に英国の私立学校が進出し、年間の授業料が900万円を超えることで話題となっています。この授業料でも入学希望者は多いと言われていますので、教育に対する投資は惜しまない人が増えていることが伺えます。公立学校をこのまま放置すると公立学校出身者は下層階級に属することになってしまいます。公立学校の割合が高い地域を中心に、公立学校偏重の見直しが必要となっています。具体的には以下のことが考えられます。
・小学校は才能見極め、才能開発の場と位置付ける。
・中学校から公立中学校でも才能に応じた進路を用意する。
・経済力の無い家庭の子供でも私立中高一貫学校に通えるように給付型奨学金などを充実する。
こうすれば中学校以上の教員は私立学校教員が多くなり、採用や待遇が多様化するので、教員の採用難は緩和すると考えられます。そして子供の才能を伸ばすことが出来ます。
地方には江戸時代の藩校に由来する名門高校がありますが、東京や関西の私立中高一貫校出身者からすると所詮田舎の高校であり、社会人となってから格差を味わいます。公立学校制度は見直しが必要となっています。