楽天の子会社切り売りが始まった
10月7日みずほ証券が楽天証券に800億円出資すると発表されました。対面サービスとオンライン取引基盤を掛け合わせ「ハイブリッド型の総合資産コンサルティング」を目指すと掲げているようですが、その実体は全く違いまいます。楽天モバイルの赤字がかさみ、本体まで繰越欠損に陥った楽天の救済策です。楽天は2022年6月中間決算で、楽天モバイルが2,593億円の赤字となったことから、楽天本体も522億円の繰越欠損となっています。この結果株価も下落し、S&Pはこの9月楽天の格付けを、「トリプルBマイナス」から投機的水準となる「ダブルBプラス」に1段階引き下げる方向で見直しに入ると発表しています。株価は高値の1,200円台から600円台に下落していますが、2021年に日本郵政から1,500億円の出資を受けたときの株価が1,145円であり、この半値572円以下となると日本郵政は750億円の評価損の計上を迫られます。そのため楽天は株価を懸命に買い支えています(今回の世界的下落局面でも600円を割り込まなかった)。この苦境を脱するために7月4日には東証に楽天銀行の上場を申請しましたが、3カ月経過した今でも承認されていません。9月には楽天モバイルの社員が絡んだ不正請求により46億円の損害が発生し、請求元である日本ロジステックの預金を差し押さえたことから、日本ロジステックが民事再生法を請求するという騒動を引き起こしていますし、日本郵政の出資を受けるに際してそれまで配送を委託していた運送会社との契約を一方的に解消したことから、委託先が提訴するとの報道もありました。こんな環境では楽天銀行の上場は認められないのではというブログを書いたらその通りになっています。楽天証券は来年の上場申請が言われていましたが、楽天モバイルの赤字が予想以上に膨らんだことから、上場を待てなくなり今回のみずほ証券の出資に至ったと思われます。
これについては10月7日の日経電子版に本質を言い当てた記事がありました。その記事では、「楽天グループは携帯事業の苦戦でキャッシュの流出が続き、早期に資金調達する必要に迫られていた。「楽天証券の出資に興味はありませんか」7月下旬、楽天は国内の金融機関にこう打診した」と書かれています。よくこんな本当のことを書くなと思っていたら、あっという間に読めなくなりました。以後は日経も「オンラインサービスと対面販売の融合を目指すみずほグループの戦略による出資」という建前論の報道となっています。
これは明らかにみずほグループからの形を変えた資金支援です。楽天は多くの金融グループに声を掛けたのでしょうが、結局三木谷社長がかって在籍した日本興業銀行を母体とするみずほグループ(木原社長は興銀で三木谷社長の1つ後輩。大学も一橋で同窓)が引き受けることとなったと思われます。これが増資の引き受けでなく楽天が保有する楽天証券株式の買い取りとなったのは、この売却益で楽天が抱える繰越欠損を解消するためです。ただしこれだけでは今年12月決算での繰越欠損を解消できないと思われ、楽天銀行の上場も欠かせません。楽天銀行の上場については、楽天が抱える係争よりも楽天モバイルの赤字に伴う楽天の財務内容の悪化が上場承認のポイントになってきているように思われます。上場承認後に大株主が資金的に行き詰ると言うことになれば、東証の審査が問題になるからです。こうなると楽天が楽天銀行の上場申請を取り下げ、楽天証券のようにみずほグループ(みずほ銀行)から2割の出資を受けるということも考えられます。
楽天が優良子会社を上場させたり、大手金融グループに持ち株の一部を売却する原因となっている楽天モバイルの巨額の赤字は今後2,3年続きそうです。それでも楽天モバイルを除く楽天グループとしては年間約1,600億円の利益を出しており、楽天モバイルの赤字が1,600億円以内となれば、楽天グールとしての損益は均衡します。あと一歩のところまで来ていますが、今後は楽天証券や楽天銀行の持ち分を一部売却する結果楽天グループの利益が減少すること、および楽天モバイルの0円プラン廃止に関して三木谷社長がかなり粗暴な発言をしたことなどにより、楽天グループから利用者が離れていることから、今後楽天グループの利益は減少に転じると予想されます。この結果今後とも楽天の優良子会社切り売りが続きそうです。