日銀総裁人事は警視総監人事と同じ

日銀黒田総裁の任期(来年4月8日)が近付き、後継総裁の人事予想が賑やかになってきました。マスコミの間では雨宮現日銀副総裁と中曾元日銀副総裁(現大和総研理事長)の下馬評が高いようです。 日経QUICKニュース社が日銀ウオッチャーを対象にアンケート調査を実施したところ、雨宮氏を予想する人が回答者の約8割に達したということです。雨宮氏はアベノミクス政策のもとでコロナ対応でも前代未聞の国債購入の上限を撤廃する政策を打ち出した人と言われ、これから課題となる金融緩和の縮小を混乱なく進められるだろうという期待が高いようです。一方中曾氏は国際派で海外金融当局との調整が期待されているようです。しかし共に次の日銀総裁になる理由としては弱いように思われます。

現在日銀は約545兆円(9月末現在)の国債を買入れ保有しており、国債保有機関の様相を呈しています。一方日銀の本来業務である金利調節は長い間手つかずの状態です。金利調節は長い間金融市場を見てきた日銀マンの得意とするところでした。一方現在の日銀の最大業務は国債買入量の調節であり、国債保有額が500兆円を超えて来ている状況では財務省との調整が最大の仕事となっています。

この状況は黒田総裁の任期切れとなる来年4月以降も変わらないと思われ、次の日銀総裁は財務省としっかり意志疎通できる人となります。日銀については安倍元首相が「財務省の子会社」と発言したことから、財務省の思いのままになる組織であることが明らかになっています。日銀法上の独立規定とか東証に上場していることは、これをカムフラージュするためのものです。

現在国債は順調に消化されているようですが、これは国債残高約1,000兆円のうち半分以上に当たる約545兆円を日銀が買入保有しているためであり、日銀の売却の仕方によっては国債が消化できないことも予想されます。従って財務省としては、財務省の思い通りになる人を日銀総裁に送り込みたいところです。少なくとも日銀愛の強い日銀マンを総裁にすることはあり得ません。日銀の健全化を重視し、国債の大量売却に踏み出したら困るからです。

こう考えると今後の日銀総裁は財務省OBにならざるを得ません。最有力は黒田総裁と同じキャリアの浅川アジア開発銀行総裁だと予想します。

今の日銀総裁人事は、財務省人事の一貫であり、警察庁人事における警視総監人事と同じ位置付けになっています。