防衛費増額の財源は資産課税の強化で

ロシアのウクライナ侵攻より日本も防衛力の増強が迫られ、GDP比2%を目標に防衛費を増額することが決まりました。防衛費の今年度当初予算額は5兆3,687億円で、これを2023年度は6兆~7兆円程度とし、その後も年に1兆円程度の上乗せを続け、2027年度に10兆円超とすることが考えられています。この財源としては当初は国債を充てるにしてもその後は恒久的財源を探す必要があるとして、今後政府・自民党で検討を進めるとのことです。

これについて日経新聞では法人税や所得税の税率引き上げが考えられるとしていますが、ちょっと違うと思います。特に所得税については、所得が増えない中で物価が上昇しており、中間層以下では生活が苦しくなっています。こんな中で所得税率を上げれば、更に節約が必要となり、経済活動が低迷してしまいます。法人税については安倍政権時代に海外企業の投資を呼び込むため相当下げましたが、現在は国際的に引き上げの方向にあり、選択肢に入ると思われます。

それよりも防衛費の増額の大部分は防衛装備という資産であることを考えると、国民資産を防衛資産へ振り替えるのがよいと考えられます。即ち、防衛費の増額分は国民資産に関する税金を財源とするのが妥当と考えらえます。具体的には2,000兆円を超える金融資産からの税収です。例えば株式の配当や預金の利息、株式の売却益に対する税率を上げます。これらの資産課税は、所得税のような累進課税になっていないため、高額所得者が有利となっており、是正が必要となっています。岸田政権でも当初金融資産課税の強化を唱えていましたが、金融界の反発に会い引っ込めてしまいました。日本の場合、国債の大量発行により個人や法人の金融資産が積みあがっており、これに課税しない限り税収の増加は不可能です。資産課税の強化による税収が防衛資産に充てられるのなら、多くの国民が納得すると思われます。

現在円安が続いていますが、この原因は日本の低金利とGDPが30年近く伸びていないという経済の低迷にあります。金利が0%台というのはゾンビ国と言ってもよい状態であり、1~2%台への引き上げは経済正常化に不可欠です。そして金利を1~2%台にするだけで防衛費の増額分の税収は確保できます。

長期的な防衛力の強化のためには、富国強兵と言う言葉があるように、経済の強化=GDPの増加が不可欠です。そのためには、円安を利用しGDPに占める輸出割合を現在の約16%から、韓国(約42%)やドイツ(約46%)並みに引上げることが必要です。かって日本は資源がない国だから加工貿易で稼ぐしか生きる道はないと言っていました。これが今ではすっかり忘れられていますが、状況は全く変わっていません。日本は輸出を増やさないと生きていけないことを再認識し、輸出増加に全精力を注入する必要があります。これが日本の永続的防衛力強化の唯一の道です。

こう考えると岸田首相の「新しい資本主義」や「資産所得倍増計画」が如何に的外れか分かると思います。