岸田首相は典型的な長銀マン
時事通信が10月14日に公表した調査結果によると岸田政権の支持率は前回より4.6%下落して27.4%だったという報道です。9月18日公表の毎日新聞の調査では29%となっており、20%台の支持率に収束してきたように思われます。この結果は安倍首相の国葬に対する評価が最も大きく影響していると思われます。新聞・テレにでは自民党と統一教会問題の関係が良く取り上げられていますが、統一教会を知らない人にとっては岸田政権を支持しない原因とはならないと思われます。やはり安倍元首相のショッキングな死を受けて拙速に国葬に決めた岸田首相の態度が情緒的で一国の指導者にはふさわしくないと判断されたものと思われます。
10月14日には政府が2024年秋に紙の健康保険証を廃止しマイナカードに一本化すると決定したことがネットで反発を受けており、岸田首相がまた判断を誤ったという報道も見受けられます。これは河野デジタル担当大臣が岸田首相に押し込んだものであることは自明であり、本来なら河野大臣を糾弾すべきものです。確かに岸田首相が最終決断したのだから岸田首相の責任とは言えますが、やはり岸田首相には文句が言いやすこともあると思われます。河野大臣に文句を言っても言い返されるだけです。私は、この判断そのものは極めて妥当であり、岸田首相の判断としては今までで一番良いと思います。
岸田首相の判断は、人に押し切られてするところがあり、そこが批判の原因になっています。安倍元首相の国葬は麻生副総裁から「理屈じゃないだよ!」と凄まれたという話が伝わっていますし、マイナカードの件は河野大臣から押し切られたことは想像に難くありません。これらを見ると岸田首相は日本人が求めるリーダー像と大きく異なると思われます。これが岸田政権の支持率が下落する原因であり、だとすれば今後上昇することは期待できないと思われます。
岸田首相は早大卒業後1982年から1987年まで日本長期信用銀行(長銀)に勤務しています。岸田首相の民間企業経験はこれだけであり、岸田首相はこのときの経験に大きな影響を受けていると思われます。岸田首相が9月22日ニューヨーク証券取引所で講演した際、自分は銀行勤務の経験がり金融取引には詳しいと述べたように、岸田首相の思考様式は長銀時代の物の見方や考え方が基本になっていると思われます。そのため岸田首相は銀行と同じ様な考え方である財務省と馬が合いますし、所得資産倍増計画や新しい資本主義など金融的発想の政策に偏っています。
私も現役の頃長銀とかなり付き合いがあり、多くの長銀マンを知っていますが、岸田首相は長銀マンの典型だと思います。多分多くの長銀OBが岸田首相を見て「ああ、長銀マンだな」と思っているのではないでしょうか。長銀マンの特徴としては、私の友人が言っていたことですが「大学院生がそのまま年をとったような人が多い」という表現が的を得ていると思います。年をとっても学究肌が残っているのです。それは長銀が産業金融を行う国策銀行として誕生し、融資先は電力やガス、鉄鋼、自動車、海運などの錚々たる大企業であり、長銀マンは都市銀行のようにどぶ板営業は行わず、産業論や金融論の素養が重視されたからでした。よくテレビで見かける「今でしょう!」の林修先生も短いながら長銀OBであり、長銀OBの特徴が見て取れます。こんな恵まれた環境にあった長銀マンは人柄が良い人が多く、取引先から好かれていました。一方では都銀や地銀の銀行マンと比べると甘ちゃん集団とも思えました。そしたら案の定バブル時代に不動産に貸し込み多額の不良債権を作り、実質的に経営破綻してしまいました。
岸田首相はこんな長銀マンの典型であり、いい人ですがどこか甘いところがあり、岸田首相の今後は長銀の辿った道と重なります。