法科大学院は司法試験予備校に駆逐される

今年の司法試験の結果を見ていたら、不思議な現象が見られました。京都大学法科大学院(以下法科大学院の表現は省略)の合格者数が119人で東京大学の117人を上回っていたのです。合格率も京都大学68.0%、東京大学60.0%と京都大学が上回っています。調べてみると昨年も京都大学114人、東京大学96人と京都大学が上回っています。京都大学法学部は東京大学法学部に合格できなかった学生が大部分であり、学力的には東京大学法学部が相当上回ります。そのため国家公務員試験や以前の司法試験の合格者数では東京大学が京都大学を凌駕してきました。それが最近の司法試験では逆転しているのです。司法試験は学力がそのまま出る試験であり、ちょっと考えられない現象です。そこでネットで調べてみたところ、どうも東京大学の学生は予備試験経由での合格者(予備試験合格者)が多いことが分かりました。昨年の実績を見ると東京大学は予備試験合格者が99人います。これに対して京都大学は26人です。法科大学院経由での合格者を合計すると、東京大学195人、京都大学136人となります。これなら学力差に応じた結果となります。(予備試験合格者が東京大学の次に多いのは慶応大学で50人)

これを見ると東京大学法学部の学生は法科大学院経由ではなく予備試験経由で司法試験合格を目指していることが分かります。これは司法試験の性格からある程度予想されたことです。司法試験は元々今の予備試験の形態で実施されていたものを、法科大学院経由がメインルートとされ予備試験は経済的事情により法科大学院に行けない人向けの例外的ルートと位置付けられました。しかし試験内容は以前と変わらないことから、司法試験合格に向けた教育に徹した司法試験予備校で勉強し、予備試験経由の方が合格は早いことは明らかでした。この方式なら受験勉強の延長であり、東京大学の学生には打ってつけです。これが最近の司法試験で顕在化してきたことが伺えます。

こうなると今後司法試験合格を目指す優秀な学生は法科大学院進学ではなく、在学中の司法試験予備校通いを選択することになります。そのため特に東京大学の法科大学院は東大法学部でもさほど優秀でない学生や他大学の卒業者が多くなっていると思われます。この現象は優秀な司法試験予備校がない東京以外ではあまりないようですが、今後地方の大都市に東京の司法試験予備校が進出し、地方でも優秀な学生は法科大学院に進学せず、在学中から司法試験予備校に通うようになると予想されます。

東京大学の予備試験合格者数からすると予備試験合格者は優秀な人が多い(在学生が多い)と思われ、大手弁護士事務所は予備試験合格者を優先的に採用している可能性が高いと思われます。法科大学院は大学の一部門であり、司法試験合格に向けた勉強に徹しきれないため、今後司法試験予備校との競争に敗れ、衰退していくと予想されます。