日銀上場を許す東証は世界の笑いもの

日銀は10月28日の政策決定会合で金融緩和政策維持を決定し、政策金利を0.25%に据え置きましたが、11月1,2日の米国FOMCでは0.75%の利上げが予想されており、日米金利差がまた広がります。この結果ドル高になるのは間違いなく、また財務省が円買い介入して1ドル140円台に押し戻せるか見ものです。

一方株式市場は、円安で輸出が多い企業では輸出代金の円換算額が増えて、或いは輸出が増えて好決算となる企業が多い日本は不振で、物価高および金利高で経済状況が悪化していると言われる米国は好調です。これを見ると株式市場は個々の企業業績よりも日本と米国の経済基盤を反映しているように思えます。

株式市場は企業に必要資金を供給するための公設賭博場と言えます。私も現役時代は株式市場に関係する仕事をしており、株式市場が機能不全になった時期が何回かあり、そのたびに失業の危機に直面しました。そのため株式市場=危ないと言うイメージがありますが、株式市場は世界がなくならない限り無くならないと思われ、社会で必要不可欠の存在となっています。

日本で株式市場と言えば東京証券取引所(東証)ですが、売買代金で見ると世界3位のようです。圧倒的1位がニューヨーク証券取引所で、第2位が上海証券取引所となっています。このように東証は世界的取引所であることは間違いありませんが、1つだけ世界的取引所としては奇妙な現象があります。それは東証だけに中央銀行(日銀)が上場していることです。米国で日銀に相当するのはFRB(米国連邦準備制度理事会)とその傘下にある連邦準備銀行となるようです。従って日銀の上場を米国で言えば、FRBと連邦準備銀行が合体して上場することとなりますが、米国人は誰も想像できないし米国では想定もされていないと思われます。それは、FRBは米国の金融政策を決定する会議体であり、連邦準備銀行はその決定に従って金融政策を実行する機関であり、共に利潤の獲得を目標にせず、かつ株式市場を通じた資金調達は必要ないからです。これはその他の地域や国の中央銀行でも同じであり、欧州中央銀行や英国中央銀行も上場していません。というよりできないし、証券取引所が認めないと思われます。

日銀が上場していると知らなかった人も多いと思いますが、本当に上場しています。ヤフーファイナンスで銘柄コード8301で株価を検索してみて下さい。ちゃんと日本銀行の株価欄が出て来ます。日銀は普通の上場会社のような会社法に基づく株式会社ではありません。日本銀行法という特別法に基づき設立された認可法人です。資本金1億円ですが、株式ではなく出資口数(1口100円。売買単位は100口1単位)となっています。そして日銀の出資口数の55%は財務省が持っています。その他の45%は個人となっています。株主総会に代わり出資者総会があるようですが、議決権はないようです。やっているのかどうかも分かりません。出資者の経営参加は禁止されており、配当も資本金の5%(500万円)に制限されていますから、出資口は定期預金のようなものとなります。日銀は多額の国債を保有しているから、その金利収入で内部留保が蓄積し、1口当たりの純資産(残余財産配分)が巨額になるだろうと思いますが、日銀は運営に必要な経費と配当を差し引いた利益は国庫に納付することになっており、利益がそのまま蓄積することはありません。これでは営利法人ではなく、普通なら株式公開は認められません。公開したくても証券会社の公開引受部に相手にして貰えません。それが認められた(1983年)のは、証券業界が財務省(公開当時は大蔵省)の管轄下にあり、大蔵省が公開を認めよと迫ったからだと思われます。即ち裏口上場です。では何故そこまでして大蔵省は日銀を公開会社にしたかったのでしょうか?それは日銀には設立当初から国債を保有する役割が予定されており、そのためには日銀が政府(国)から独立した法人でないと困るからです。上場は日銀が独立した法人であることを主張するには都合が良いのです。国の機関ならば、国債の発行者(債務者)が国債の保有者(債権者)となって、債務者と債権者が同じ主体になってしまい、経済原則が成り立たなくなってしまいます。このため大蔵省のごり押しで日銀上場が実現したと思われます。

日銀が公開基準に合致しないのは明確であり、日銀の上場を承認した東証は世界の証券市場関係者の笑いものになっていると思われます。