数年分の年収を払って解雇できるようにした方がよい
日本人の収入は統計上30年近く上がっていないことになっています。中にはキーエンスのようの社員平均年収が2,000万円を超える会社もありますが、概ね正しいと思われます。問題はなぜこういう事態になったかと言うことですが、これには複合的な原因があると思われます。例えば、日本人の学力が高くなく、革新的な製品を生み出せないことであり、日本社会に同調圧力があり、個人が才能を発揮できないことであり、日本の会社が終身雇用の公務員型雇用を目指していることが考えられます。
今後日本人の収入を上げるためには、日本の会社の終身雇用制を壊す必要があるように思われます。というのは、日本の会社には「働かないおじさん」が多数おり、若手の不満の対象になっているからです。これらの人たちは自分から職務放棄しているのではなく、会社から職務を与えられないため、仕事がなく、会社で手持ち無沙汰になり、そう呼ばれているのです。要するに余剰人員です。余剰なら整理すればよいのですが、日本の労働法上それが難しいため、「働かないおじさん」が社内に滞留することになります。これは会社の雰囲気上も良くないですし、本人の精神衛生上も良くありません。
日本でも金銭を払って解雇する制度を導入すべきだという議論が出ますが、実現に至っていません。それは解雇が乱発されて、雇用が不安定になるという懸念からのようです。
しかし制度の設計次第では、会社および解雇される本人にとって有益な制度になると思われます。例えば、勤務年数に応じた安くない解雇金額を設定すれば、むやみに解雇できませんし、解雇される本人も再就職の時間を十分に確保できます。一例として、勤続年数5未満の社員を解雇する場合に解雇金を年収の1年分、勤続5年以上から10年までは年収の2年、10年以上から20年未満の場合は年収の3年分、20年以上30年未満は4年分、30年以上は5年分とします。勤続年数が多くなるに従って解雇金が多くなるのは、それだけ再就職が難しくなるからです。勤続30年以上で年収の5年分と言えば多いような気もしますが、定年退職まで5年以上ある人なら会社にとっても十分メリットがあります。それにこの金額だと毎年多数の社員を解雇するのは難しくなります。解雇金の年数についてはもう少し細かな設定になると思いますが、設定のポイントは解雇される社員に新しい技能の習得の時間が取れる金額であること、および会社としても年間多数の解雇者は出せない金額であることです。
不要と思われながら会社にいることは拷問と同じですし、会社を自ら辞められないのは金銭的不安があるからであり、これらがある程度解決されれば社員および会社にとって良い制度となります。ただしこの制度を使えるのはある程度優良な会社に限られますが、この制度が必要とされているのは、そのような会社に限られます。