GDPを100兆円増やしたら西村康稔首相もあり

政府は10月28日、財政支出の総額が39兆円規模となる「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を閣議決定しました。これは次の4本柱からなっているということです。

①物価高騰・賃上げへの取組​

②円安を活かした地域の「稼ぐ力」の回復・強化​

③「新しい資本主義」の加速​

④国民の安全・安心の確保​

このまとめ方は官僚の作文の典型と言えます。心柱がないのです。心柱というのは東大寺五重塔などの高い塔建築物の中央にある1本の巨大な柱で、地震などによる振動を吸収し塔の倒壊を防ぐと言われています。東京スカイツリーにも設けられており、周囲の4本の柱の中央にあり、スカイツリーで一番重要な構造物です。

今の日本を見ればこの心柱に相当する政策が明確に存在します。それはGDP倍増政策です。日本の政策分野を財政・経済・国民生活・安全保障という4つに分けると、それらの解決策はGDP倍増に行き着きます。財政を見ると国債残高が1,000兆円を超え、GDP約500兆円の200%程度となっています。米国、英国など先進国では100%程度であり、世界1の国債依存国となっています。では国民の公的負担率(所得に占める税金・健康保険料・年金掛け金などの割合)が低いかと言うとそんなことはありません。日本人の公的負担率は48%程度(2021年度)となっており、ゆりかごから墓場までと言われる程福祉が充実した英国並です。日本は1990年頃からGDPは横ばいであり、そのため国民所得も横這いとなっています。そんな中1989年に消費税が導入されてから10%になるなど租税負担や社会保険料負担が増加しているのですから、国民生活が苦しくなるのは当然です。それでもまだ足りずに国債を増やして賄ってきたことになります。これを解消するにはGDPを増やすしかありません。現在日本の国家予算は約100兆円であり、この内税収は約60兆円(GDPの約12%)です。従ってGDPが倍増の1,000兆円になれば120兆円の税収となり、国家予算は全額税収で賄えることになります。勿論GDPが1,000兆円になれば国家予算も膨らむでしょうから、こうは上手くいかないでしょうが、税収が増えることは確実です。これしか日本の財政を立て直す方法はありません。これができれば経済・国民生活・安全保障分野の問題も全て解決します。例えば今問題になっている防衛費の増額5兆円もGDP1,000億円となれば何ら問題になりません。GDPの2%で20兆円が可能となり強固な防衛体制が作れます。

問題はどうしたらGDP倍増ができるかですが、輸出を増やすしかありません。現在日本の輸出のGDPに占める割合は16%程度となっています。一方ドイツは48%であり、隣国韓国は42%となっています。ドイツは国債0ですし、韓国は50%程度です。これは輸出により企業の海外への売上が膨らみ税収が増えるからです。それに輸出により得られた外貨が国内通貨に変換され、国内通貨量が膨らみ好景気となります。今の繁栄する韓国を見れば輸出の威力が良く分かります。

円安となっている今こそ日本は輸出立国を目指すときです。そもそも日本は戦後長い間資源の無い日本は加工貿易に立脚しないと生きていけないとして輸出に力を入れていました。池田首相が海外でトランジスタのセールスマンと言われたのは有名な話です。そして池田首相は輸出の増加で所得倍増を実現しています。

今のドル円レート約150円は1990年頃のレートと同じですが、この間米国の経済は年間2%以上成長(30年間で約60%)してきたのに対し日本は横ばいであることを考えると、ドル円レートは150円から60%下落(240円)してもおかしくないことになります。

今後ドル円レートは反転し円高になるとの予想もありますが、私はトレンドとしては200円を目指すと思います。日本の今の経済は残高1,000兆円を超える国債マネーで維持されており、円高になることはないと考えられます。

これにより今後は日本からの輸出がしやすくなり、この環境は1980年代のバブルの原因となった輸出環境と似ています。国債残高が1,000兆円を超えた今日本政府が行うべき最大の政策は、誰が首相であっても輸出によるGDP倍増政策しかありません。自分で考えない岸田首相はこれが分かっておらず、官僚の作文に乗っかっています。

ここで私が期待するのは西村経産大臣です。西村大臣は経産省OBであり、安倍内閣や菅内閣での大臣のときは官僚への要求が厳しいことで有名でした。そのせいで経産省では西村大臣の取説(取扱い説明書)があるとの報道ですが、それくらい懸命に職務に取り組む大臣は稀有だと思います。西村大臣の動きを見ていると、TSMC熊本工場訪問などにみられる半導体産業強化などGDP増加の方向性が明確であり、期待できます。西村大臣でGDPが100兆円増加したら、西村首相もありだと思います。