国債を廃止して日銀貸付に移行した方がよい
11月11日ドル円レートが146円台から一挙に138円台まで7円以上の円高となりました。円安になるときは1日にせいぜい1,2円で、円高になるときは1日に7円なのですから、為替は良く分かりません。私も以前資産運用として為替取引(FX)をやっていたことがありますが、心が安らぐ日はありませんでした。私には向いていないようです。
さてこれで円安の原因が和らいだことから日銀への金利引上げ圧力も弱まるのでしょうか。10月に値上げされた商品が多かったことから、10月の消費者物価は3%以上上がったと考えられます。そうなると黒田総裁が唱えていた物価2%台を超過することとなり、金利引き上げの条件が整って来ます。日銀は10月の政策決定会合で2022年の物価上昇率見通しを7月の2.2%から2.9%に引き上げましたが、2.9%というのが味噌です。これだと黒田総裁が正常な物価の上昇率とみなす2%台に留まるからです。この通りになれば黒田総裁の物価コントロール力は素晴らしいということになります。こんな力があるのならば、もっと早くに発揮して欲しかったものです。
現在世界で金利を上げないのは日本ぐらいになっています。これを見ると世界で日本の経済基盤が如何に弱いかが分かります。世界では物価対策と同時に金利の正常化の観点から金利を引き上げているように思われます。今の日本の金利では企業も個人も借入に対する感覚が麻痺し、空気や水と同じ様になっています。これでは努力して借入を返済しようと言う気になりません。この空気が日本経済を益々弱くするように感じられます。金利を0.25%や0.5%上げたくらいでは物価上昇を抑えることは出来ないし、経済にもあまり影響はないのですが、経済正常化を目指す姿勢を見せるという点で意味があると思われます。
一方これくらいの金利引上げでも日銀の財務内容や国の財政への悪影響が大きいため黒田総裁は金利を上げられないとの見方もあります。現在日銀は約560兆円の国債を買い入れ保有しており、金利が上がると売却価格が下がり含み損が大きくなります。日銀は国債を簿価で評価しており、含み損は会計上反映されないようですが、常にエコノミストから財務上の問題点として指摘されることになります。国の財政でも金利引き上げ分国債の利払いが増え、0.25%引き上げただけでも利払いが2倍になるので厄介です。それでも日銀が国債発行残高の約半分を保有していることから、利息の半分は日銀に払うことになり、日銀はこの分を剰余金として国に納付しますので、国の収支にはあまり影響ありません。ただし利払い用に国債を増発することになるので、国としては利上げは望まないと思われます。
国債が日銀と国に対してこのような不都合を持つのなら、一層国債の発行を止めて日銀から国に必要資金を貸し付ければよいと考えられます。国債も国の借金であり、日銀からの貸し付けも国の借金で同じです。財政法5条は日銀が直接国債を引き受けることと日銀が国に貸し付けることを禁止しており、そのため日銀は国債を市場から買入れる形を採っていますが、国債の半分を日銀が保有していると言う事実をみれば、実質的には財政法5条の逸脱行為であるのは間違いありません。そうだとすれば財政法5条を改正し、国が日銀から直接借り入れられるようにした方が良いと考えられます。そうすれば金利は低利で据え置くことができ、日銀は国債のように含み損を心配することがなくなりますし、国は利払いの増加を心配する必要がありません。
国債は国の歳入歳出(予算)遣り繰りのための手段であり、最終的には日銀券で償還されます。もちろん税金で償還するのがベストですが、今後歳出を上回る税収は期待できませんからこれは不可能です。この結果国債の発行限度は日銀券が増え過ぎて国民生活を困難にするインフレが起きない限りとなります。日本の場合1990年以降GDPが約500兆で横這いであることを考えると、国債発行により増加した資金は貯蓄に回り、世の中にはGDP約500兆円になるような資金しか流通しないと考えられるため、国債がいくら発行されてもインフレは起きないようにも考えられます。これは国債を日銀からの貸付金に振り替えて同じです。国債だと民間の資金を吸い上げますから市場の資金が減りますが、日銀貸付ならこの分市場の資金が増加すると言うメリットもあります(国債の大量発行で市場の資金を吸い上げてきたため経済が停滞したとも考えられる)。国債も日銀貸付金も最終的には償却する(帳簿から消す)ことになりますが、日銀貸付だと日銀で貸付債権を放棄(債権放棄損となる)し、その原資である日銀券という債務を免除(債務免除益となる)すれば、損益を相殺でき、何もなかったことにできます。国債と日銀貸付はあくまで国の運営(遣り繰り)上の技術に過ぎないことが分かれば、こういう結論に行き着きます。
参考)財政法第5条
すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。 但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。