かかりつけ医制度は国民の寿命を縮める

政府は年内にもかかりつけ医制度を整備する方針を決定するようです。その理由として新型コロナ禍で患者に対応しきれない地域医療の脆弱性が明らかとなったからとしていますが、おかしな話です。コロナ禍で明らかになったのは自己保身に走りコロナの疑いがある患者を診ない開業医の実体です。結局コロナに対応したのは国公立病院や大学病院が中心でした。医師会傘下の病院は医療崩壊を叫びながら自らはコロナ医療現場の外にいました。この様子を見て医師会の実体が分かった国民は多いと思います。

このことから分かったことは、いざとなったら民間病院は当てにならず、当てになるのは国公立病院であり、国公立病院を減らしてはいけないということです。コロナ禍の中でも厚生省は国公立病院を減らす計画を発表しており、コロナから何を学んだのでしょうか。

国公立病院減らしは医療費削減の目的から出発しており、コロナ禍で受診が減ったはずの2021年でも医療費は44.6兆円で4.6%増加しています。受診が減っても医療費が増加するということは、医療費が受診に応じて増減する変動費ではなく、病院の経営に必要な固定費となっているということです。このことはコロナ禍の中で病院に行った人なら分かると思います。私のケースで言えば、皮膚科を受信したら単なるかぶれという診断にも拘わらず、大きなチュウブ入りの塗薬に加え内服薬まで処方されました。心臓関係の2薬を服用していると申告しているにも関わらずです。また降圧剤を3カ月ごとに貰いに行く病院では血圧は正常にも関わらずCTによる胸部撮影と心臓撮影、心電図検査を求められました。これなど待合室の患者の少なさを見れば病院の経営対策であるのは明白でした。こうして病院は病院の経営に必要な費用を医療費として請求しているのです。だから民間病院が増えれば受診数とは無関係に医療費は増加します。国公立病院の場合このようなことをしないため、受診数の減少が赤字の増大となって現れます。これから分かることは、赤字の国公立病院を減らして税金での補填を減らしても、その分民間病院が請求する医療費が増加するので、国民負担として減らないと言うことです。

現在病床数で見れば民間78%,国公立22%となっているようで、これは人口1000人当たりでみると2.9と米国並で、英国2.5より多いようです。と言うことは国公立病院減らしは限界に来ているということになります。加えて重大感染症が蔓延した場合、民間病院が受け入れを渋ると言うことが明らかになったからには、国公立病院の機能強化こそ検討する必要があります。

重大感染症蔓延時以外でも国公立病院は重要です。それは民間病院、とりわけ開業医より医療技術が高いからです。その理由は、国公立病院は規模が大きいところが多く、検査機器や手術設備が整っており、それに魅力を感じる向学心に富む医師が集まっているからです。同時に医師同士の競争も激しく、かつ継続的な研修が行われるため医師の医療技術は日々向上します。一方民間病院の大部分を占める開業医は検査機器も少なく一旦開業したら日々の診察で忙しく技術向上ための研修は殆ど受けられません。その結果開業するまでに習得した技術でずっと診てるという医師が殆どとなっています。私は会社退職後開業医にかかるようになりましたが、レベルの低さに驚きました。先ず診察に際して問診も碌にしませんし、検査機器は殆どありません。それで薬だけ処方します。国公立病院なら問診があって、原因が分からなければ検査をして、徹底的に原因究明を図りますから安心感がありますが、開業医のやり方は不安で仕方ありません。こんな開業医をかかりつけ医にして国公立病院を受診できないようにすると言うのですから、これは患者虐めとも言えます。これが実施されれば、最初に国公立病院を受診していれば治癒したのに、かかりつけ医制度のため国公立病院で受診できず手遅れとなるケースが増大します。即ちかかりつけ医制度は国民の寿命を確実に短くします。これを防ぐためには、先ず国公立病院を中心とした大病院を受診し、そこで検査をしたところ重大な病気ではないことが明らかになれば、近くの開業医を担当とする制度にするのが妥当です。入口が間違っています。