NHK改革にコンサル料が増えるのは当たり前

11月9日の毎日新聞電子版に「NHK、会長主導改革の陰でコンサル費35億 原資は受信料=公金」という記事が掲載されていました。NHKで2019年度のコンサル契約総額が約9億6,000万円だったのに、前田氏の会長就任後の2020年度は約13億6,000万円、21年度は約34億,9000万円と増加していることを問題にしているようです。さすが真っ先に廃刊に至ると思われる新聞社の的外れな見解です。この記事が出てきた背景には、10月11日にNHKが受信料の1割値下げを発表したことがあるようです。この結果NHKは約700億円の減収になることから、NHK内ではこれを決めた前田会長に対する反発が強まっており、この勢力と毎日新聞がつるんでいると考えられます。毎日新聞はスクープと銘打っていますが、なんと同じ内容の記事が文春にも掲載されています。

これを問題視する毎日新聞の論理は無茶苦茶です。記事によると「2020年1月に就任した前田晃伸会長は、事業などの「肥大化」から「縮小」へとかじを切る改革を進め、大規模なコストカットを行っている。その陰で、コンサル費の膨張が進んでいた。しかし、最高意思決定機関の経営委員会や理事会などで全体的な議論はなく、「チェックが甘い」(幹部)との声がNHK内部から上がっている。」となっていますが、「事業などの「肥大化」から「縮小」へとかじを切る改革を進め、大規模なコストカットを行っている」ならばコンサル料が増えるのは当然です。このような改革案がNHK内部で検討して出てくるはずがなく、本気でやろうとすれば外部コンサル会社に出さざるを得なくなります。2021年度のコンサル名目の契約額のうち約87%に当たる約30億4,000万円が大手経営コンサル会社5社(デロイトトーマツコンサルティング、野村総合研究所、ガートナージャパン、PwCコンサルティング、ボストンコンサルティンググループ)となっていることも問題視していますが、NHK幹部が言っている「大きな改革を進めるための判断材料にする資料や助言を得るには、小さいコンサル会社に頼めない」のは当然であり、何ら問題ありません。

コンサル料の増加を問題にするのは、NHK改革に反対するNHK内の勢力であり、NHKの多数派だと思われます。これまでNHK会長に就任した人はこの勢力に迎合し、現状を守ることで会長の任期を全うする道を選んできましたが、前田会長は国民の声と世界の公共放送見直しの動きに照らしてNHK改革は不可避と考えているようです。では前田会長はNHK嫌いかというとそんなことはないと思われます。前田会長の会見やインタビュー記事を見るとNHKは日本に必要な放送局であり、優秀な放送内容も多いと言っています。それでもインターネットの発達からNHKの役割は低下しており、今のままではいずれスクランブル化に行き着くと言う危機感があるように思われます。今回の1割値下げも前田会長は当初衛星契約者(地上放送と衛星放送が見れる)のみ値下げする計画だったようですが、この説明を受けた自民党総務員会委員からそれでは契約者の半分にしかメリットがないから(選挙で困るから)地上契約者も含めるよう談判されたようです。その結果前田会長の目論見が狂ったようですが、そこは老獪な前田会長はNHKの規則で未契約者や未払い者に受信料の倍の割増金を課すことを自民党側に認めさせたようです。これが実施されれば未払い約700万世帯の多くが支払うことになると考えられますので、NHKは約1,600億円(1,950円×12カ月×700万世帯)の増収となり、値下げ約700億円を軽くカバーします。しかし未契約者または未払い者に受信料の倍の割増金を課すことは、これまでNHKが自民党に立法化を要請してきましたが実現していません。これをNHKの規則で実現するのは法治国家として許されないと思われます。また通常の商取引での違約金(遅延利息)は支払額の40%程度が多く、2倍の違約金は裁判上社会通念に反し無効となる危険があります。

毎日新聞が批判するとすれば、前田会長の受信料値下げにはこのようなカラクリがある点です。また英国ではBBC受信料が2028年3月までに廃止する方向にあることやフランスでは今年5月フランス公共放送の受信料が廃止されたことから、NHKも受信料値下げではなく廃止すべきとの主張を展開すべきなのです。本件は文春も書いており、同じ資料がNHK内部の改革に反対する勢力から改革潰しのために流されたことが明確です。名門毎日新聞がこのような情報操作資料に踊らされ、スクープと称して追及記事を書くとは憐れというしかありません。毎日新聞から文春新聞に商号変更した方が良いと思われます。正常な思考力を失っている毎日新聞の廃刊は近いと思われます。