銀行は日銀当座預金を減らすべき

11月20日の日銀毎旬営業報告を見ると日銀保有の国債は約559兆円となっています。一方その購入原資は日銀当座預金約489兆円が中心となっています。日銀当座預金は主として日銀が銀行から預かっている資金(返還するする必要があるから負債)です。そうだとすれば日銀の国債買入は、銀行の資金を使っており、銀行の代わりに国債を購入していることになります。日銀が国債を銀行から購入するのは、銀行から国債を取り上げてその資金が民間融資に回るようにする(金融緩和)ためですが、この資金を日銀当座預金で預かっているわけですから、資金が民間に回るはずがありません。銀行が国債売却資金を日銀当座預金に置いておくのは、日銀が0.1%の利息を付けるため(法定準備預金は無利息)であり、日銀が引き留めていることが分かります。日銀は日銀当座預金が増え過ぎないようにするためにマイナス金利を導入していますが、この日銀当座預金の金額を見るとあまり意味がないように見えます。

私は、銀行は日銀当座預金を減らすべきだと思います。確かに0.1%の利息が付くのは魅力でしょうが、日銀当座預金が国債で運用されており、国債リスクの問題があります。というのは、国債残高が1,000兆円を突破しており、2022年度も約35兆円の国債発行が計画されていることから、国債が税収で返済されることは不可能と考えられます。ということは、1,000兆円全額返済不履行かというと、それはないと考えられます。国債の返済不履行ということは国の破産を意味しますので、これは避ける必要があります。現在日銀が約559兆円の国債を保有していますが、この結果実質的にこの部分の支払利息負担が国に生じない(一旦支払ってもその大部分は日銀から国に納付される)ことを見れば分かるように、国債の日銀買入は国債の償還と同じ効果を持ちます。要するに国債の償還は日銀買入の形で必ず行われると考えられます。

しかし日銀が国債を購入する原資が問題です。現在は日銀当座預金が購入原資の大部分を占めていますから、銀行が日銀に預け入れている資金の運用として国債を購入していることになります。これだと国債が返済不可能となれば日銀は銀行に資金を返済できないと言う理屈となります。

そもそも今の国債は1年以上の保有が予定されており、流動性資金である日銀当座預金で購入するものではないと考えられます。しかし日銀当座預金の残高が概ね変化ないことから固定資金と同じ性質を持つとして、国債の購入に使っても良いとなっていると思われます。日銀当座預金が国債の購入に充てられているということは、国債による代物弁済もあると言うことであり、国債のリスクは銀行が負っていることになります。国債は必ず日銀が買入れることで償還されると考えられますが、これを書いた法律はなく、民間預金者が1,000万円までしか保護されていないことを考えると、日銀当座預金も全額は保護されないとも考えられます。要するに今の制度の中では、日銀当座預金はそんなに安全ではないということです。従って銀行は日銀当座預金への預入額を日銀当座預金のリスクを考えて縮減する必要があると考えれます。そうすれば日銀は、国債は従来のように日銀券で購入すると言うルールに戻ると考えられます。11月20日現在日銀券は約120兆円計上されていますが、国債は日銀券の範囲内で購入するという従来のルール(慣習)に従うと、あと日銀券を440兆円発行し、この分日銀当座預金は縮減するのが理想的な日銀のバランスシートです。そうなれば最終的に国債は日銀券と相殺して帳簿上消し去ることが出来ます。今のままなら国債と日銀当座預金を相殺することになり、銀行の損失が大きくなります。いずれにしても1000兆円を超えた国債は、日銀のバランスシートを使えば簡単に消し去ることができます。それは日銀券が負債と言いながら債権者(返還を求める人)がいない擬制負債だからです。