政府自民党が議論すべきは増税でなくGDP増加策

岸田政権と自民党が増税議論を本格化しています。先ず防衛予算増額の原資を増税によって賄うのは確実です。その他に医療費や年金の原資もあります。全国民に影響する物価上昇率が3%に迫ろうとしている中で、来年4月以降に期待される賃上げでは、大企業は3%以上上げる一方、3%未満に留まる中小企業が大部分を占めると思われます。その結果国民の多くの生活は一層苦しくなること必然です。税金に年金掛け金や健康保険料などを含めた公的負担の割合は平均世帯で約45%に達していると言われていますので、この状況で平均以下の世帯でこれ以上税金を上げるのは限界に来ています。このことは平均以下の生活者なら実感しているはずですが、増税の議論をする政府関係者や自民党議員は高所得者なので分からないようです。このまま増税が実施されれば次の総選挙で一挙に自民党が政権を失うこともあると思われます。従順な日本人も我慢の限界に来ています。

1990年以降所得が増えない中で医療費や年金を中心に歳出が増加すると政府自民自民党は増税を繰り返してきました。消費税だけでも7%上がっています。そしてこの度に国民は節約に努め、この結果経済が低迷してきました。所得が増えない中で増税を行えば経済が低迷するというのは論理的に自明のことです。これまでの増税は、既存の税の税率を上げること、新たな税を設けることでしたが、増税=税収の増加は他の方法でもできます。それはGDPを増やすことです。2022年度予算で歳出は約108兆円で、歳入のうち税収は65兆円(60%)となっています。日本の2021年度実質GDP約537兆円なので、GDPに占める税収の割合は約12%です。GDPが600兆円に増えれば税収は72兆円となり7兆円増加します。これは消費税3%引上げに相当する税収の増加であり、5年後の防衛予算増加額に相当します。これから分かるように税収が足りないならGDPを増やすことを考えるべきなのです。

日本のGDPは1990年以降約530兆円前後で横這いとなっています。米国は毎年2%程度伸びていますので、30年間で少なくとも60%以上増加しています。これは欧州でも同じ傾向です。お隣韓国は6倍以上伸びています。その結果日本以外はGDPの増加によって税収を増やしていますから、国民の生活はそれほど悪化していません。日本だけが困窮の度合いを深めています。だから日本もGDPを増やして税収を増やすと言う方向に頭を切り替える必要があります。安倍政権は当初これを目指したのですが、金融緩和による金利負担減少と株価上昇効果で満足し、産業競争力の強化はなおざりとなりました。1980年代の日本のバブルは、戦後の輸出増大によってもたらされたもです。輸出によって獲得された外貨が円に転換され、円の国内流通量が増大しこれが不動産に向かったのです。そして不動産業やそれに資金を提供する金融業が高給を謳歌するのを見て、輸出を支えた製造業に優秀な人材が行かなくなり、製造業が衰退していきました。こうなるとGDPが増えないのは当然です。

お隣韓国は名実ともに先進国の仲間入りをし、多くの経済指標で日本を抜いています。これは韓国が輸出に力を入れ、GDPに占める輸出の割合が約42%と先進国でドイツ(約48%)に次ぐ高さになっているからです(日本は約16%)。輸出代金で獲得した外貨がウォンに交換され、ウォンの国内流通量が膨らみ、日本のバブル時代の様相を呈しています。韓国は国内市場が小さいから輸出で稼がないと生きていけないという考えで、国家政策として輸出を振興しています。韓国の企業は国際市場を睨んだ開発を行っており、それが韓国製品が世界で売れる原因となっています。これは戦後日本が目指した政策であり、すっかり韓国にお株を奪われています。この結果韓国の国債依存率は50%程度と良好であり、防衛予算は約5兆円と日本並みです。輸出の割合が約48%と世界一であるドイツは最近国債を発行していません。このように財政を健全化し、国民を豊かにするには輸出を増やしGDPを増大するしかありません。そうすれば税収は自然と増えてきますから、増税の議論は不要となります。これが分かれば政府自民党が今真剣に議論すべきは増税ではなく、GDP増加策、特に輸出増加策と言うことになります。