台湾有事より朝鮮動乱への備えが必要
11月26日に実施された台湾統一地方選挙(首長選挙)では22首長のうち与党民進党は5議席に留まり、敗北したと報道されています。野党国民党が13首長を獲得していますから大敗というところですが、前回より1人減っただけですから、国政とは別物という見方があるようです。それでも蔡英文総統は民進党党首(主席)の辞職を発表しましたから、世論の変化を感じているようです。
最近台湾有事という言葉をよく聞きますが、ピンときません。この言葉は中国が武力で台湾を統一すると言う意味のようですが、ちょっと考えられません。それは中国にとってメリットがないからです。武力衝突になれば中国にも多くの犠牲が生じますし、欧米も介入して相当の期間混乱状態となります。中国は欧米列強に租借などの形で領土を占領された歴史がありあますが、香港返還などでわかるように時間を掛けて解決しています。台湾も経済的には密接不可分の関係になっており、このまま行けば一体化が進むと考えられます。何も武力で統一する必要はありません。台湾有事と騒いでいるのは米国を中心とした中国対抗勢力であり、中国の目論見とは異なるように思われます。
11月12,13日にカンボジアでasean+3首脳会議、15、6日にはインドネシアでG20首脳会議があり、中国の習近平主席が出席し、多くの西側首脳と会談しました。このような会談ではこれまで習近平主席が笑顔を見せることはあまりありませんでしたが、今回は笑顔が見えました。岸田首相を迎えた際にも笑顔で自ら話しかけており、これはこれまでなかったように思われます。このように中国は明らかに態度を変えています。それは経済で欧米と対立し、中国経済が変調をきたしていること、およびロシアがウクライナに進行し孤立無援に陥っていることから、欧米との対立は好ましくないと考え始めたように思われます。
それに最近ゼロコロナ政策で厳しく隔離されることに反発した北京や上海などの市民が公然と習近平退陣を求める声を上げており、中国に変化が起こっていることが伺えます。中国ではどんなに強大な王朝でも時間が立てば消滅しており、共産党王朝の終わりが始まっているように思われます。
この結果中国と台湾はお互いが少しづつ変化し、選挙を通じて一体化するように思われます。すくなとも中国が強力な武力で台湾を無理やり統一する可能性はないのではないでしょうか。
これに代わって東アジアで危険が増しているのは、朝鮮半島だと思われます。韓国で保守派のユン大統領が誕生して以来、北朝鮮はミサイル発射を繰り返していますし、これに対して韓国も米軍と一緒になって軍事演習を繰り返しています。北朝鮮と韓国2国間の対立ならお互いに牽制し合う関係に留まると考えられますが、北朝鮮はロシアに武器を供給し、韓国はポーランドに武器を供給していることが今後火種になると考えられます。ロシアの場合武器を供給する国はイランと北朝鮮くらいであり、このうちイランは欧米との対立は避けたいことから自制すると考えられます。一方北朝鮮は欧米の牽制が効かずロシアだけが味方(中国はつかず離れず)の状態ですから、今後武器の供給を増やしていくと考えられます。この結果ロシアは北朝鮮の軍需産業を支援しますから、北朝鮮の軍需産業は強力となります。一方韓国はポーランドに戦車、航空機、砲弾などの武器を輸出する契約を増大させており、これは年間2兆円にもなると報道されています。これに対してロシアのプーチン大統領はロシアと韓国の良好な関係を破壊するものだと警告しています。韓国からポーランドに輸出された武器は現在ポーランドが持つ武器をウクライナに提供することに繋がり、ロシア兵の殺戮に使われることになります。即ち韓国が間接的にロシアを攻撃していることになるのです。そのためポーランドと隣接するドイツはポーランドから武器提供要請を断っています。
ウクライナ戦争はどういう形で終結する分かりませんが、終結したときにはロシアと北朝鮮および韓国の軍需産業が強大化していることになります。韓国に恨みを持つロシアは北朝鮮に最新の武器を供給し、朝鮮半島は休戦ラインを挟んで南北朝鮮の力比べとなる事態が考えられます。全面戦争にはならないにしても大規模な衝突が起きる可能性が大きいと思われます。日本は台湾有事よりもこちらへの備えが必要です。