国債は日銀券の仮の姿、償還で日銀券に変わる

防衛費の財源問題で岸田首相や一部の自民党国会議員は、国債は借金を将来世代に払わせることになるので適さない、税金で賄うべきだと主張し、増税を行う方向となったようです。財源が国債となるといつも借金を将来の世代に払わせることになると言う説が幅を効かせていますが、本当でしょうか。

国債は将来の世代が税金で払う(返済する)と思っているとすれば、それは間違いです。将来の世代が国債を税金で返済することは100%ないと言えます。そもそも国債残高が1,000兆円を超え、今年の予算不足を約35兆円の国債を発行して賄っている状況では、将来に渡って国債の返済に回せるような税収は出てきません。

国債は通常期間十年で発行され償還期限がきた国債は借換債という国債を発行して償還原資を調達しています。国債は60年間は借換債を発行して借り換えることができます。ただし10年毎に当初発行額の6分の1は税金で返して借換債の金額を少なくするようです。それをしても国債残高は1,000兆円を超えて増え続けていることになります。こうなると将来世代が税金で返済することは不可能であることが分かると思います。こんなことは分かっているはずなのに岸田首相や一部の国会議員は、国債は借金を将来世代に払わせることになると嘯いています。いい加減にして欲しいものです。

ではここまで大きくなった国債は将来どうなるのかと言うと、最終的には日銀券に変わります。国債は国が返済を約した証書(証券)であり、国の信用を体現しています。もう一つ国の信用を体現した証書(証券)に日銀券があります。日銀券は物理的には紙に模様を印刷したものに過ぎませんが、国家の信用を体現しているためお金としての価値を持ちます。国の信用を体現にしている点で国債と日銀券は同じであり、国債は日銀券の仮の姿と言えます。法律的に言えば国債は、停止条件(償還期限の到来)付き日銀券発行(引き換え)請求権と言えると思います。従って、償還できない国債が出てきた場合、日銀で国債を買い取り、国債証券の所有者には日銀券が渡されることになります。国に税金によるお金がないから返せないということはありません。また日銀は上場企業だから政府の言う通りにならないと言こともありません。上場させているのが間違い(中央銀行が上場しているのは日本だけ)であり、いずれ上場は廃止され、国の機関であることをはっきりさせます。国債は税収不足を補うための一時的な手段であり、税収が歳出を上回ったときに償還されることが予定されていましたが、今の日本の状況では発行当初から日銀券での償還が予定されていると考える方が妥当です。

それは現在日銀が国債約564兆円(2022年12月10日)を買入れている状況を見れば分かります。日銀はこれだけの国債を保有している結果、国から1兆円以上の国債利息の支払いを受けますが、その殆どを国庫に納入しています(2021年度は1兆2,583億円)。これは財務省が支払った利息がそのまま財務省に戻っていることを意味しています。即ち日銀が買入れた国債は財務省が償還したのと同じ状態(支払い利息負担がない)となっているのです。ただし現在日銀の国債買入原資の多くは日銀当座預金(約477兆円)となっており、理屈としては、日銀は遊んでいる資金の運用として国債を購入していることになります。しかし実際は多くなり過ぎた国債の残高調整の意味もあり、どこかの地点で国債残高と日銀券を相殺して国債残高を減らすことになります。国債の放棄損と日銀券の債務免除益で日銀のバランスシート上国債は跡形もなく消えてしまいます。国債は国を存続させるための遣り繰り上の手段であり、増え過ぎた国債は日銀券と相殺して減らし調整することは国債制度が出来たときから考えられていたと思われます。世界の各国が国債を使うのはGDPが計画より伸びず税収が不足するときであり、国債はGDPが増えるまでの繋ぎと言えます。国債を日銀券と相殺して償還するタイミングは、歳入を賄えるGDP水準となったなったときが望ましく、日本の場合現在のGDP(約537兆円)が倍の1,000兆円になったときとなります。世界の多くの国はこの30年間にGDPを数倍にしており(中国40倍、韓国は6倍)、不可能ではありません。そのため日本はGDP倍増を国家目標として邁進することが必要です。