政府自民党は防衛費増額の一部を増税で賄うことを決めました。自民党や閣僚の一部には国債で賄うべきという意見も相当ありましたが、これに対しては「将来の世代に借金を払わせることになる」とか「防衛費には建設国債は使えない」などの理由で抑え込みました。しかしその後政府は自衛隊の施設には建設国債が使えると言い出し、更には自衛隊艦船にも建設国債が使えると言い出しました。これまで政府は、建設国債が使えるのは使用が長期に渡る資産であり、防衛費は消耗費に近いから対象にならないと言っていました。しかし自衛隊の施設は固定資産でありその他の国の施設と何ら変わらないことから、国の施設に建設国債が使え自衛隊施設には使えないという理屈はあり得ません。また海上保安庁（所属は国土交通省）の艦船建造費には建設国債が充てられており、自衛隊の艦船建造費には使えないと言う理屈もあり得ません。政府自民党はこれらを認めないまま増税を決め、その後これらを認めたことから国民の不信感は強まっています。政府自民党がなぜ防衛費の一部に建設国債の使用を認めたかというと、防衛費は2027年まで約４兆円増加し岸田首相はそのうちの約１兆円を増税で賄いたいと説明しましたが、残り約３兆円の財源手当てが付かなったからです。要するに今回の増税は財源を良く検討しないままに「防衛強化の必要性を国民に認識してもらうためには国民に応分の負担をしてもらう必要がある」との建前論で突っ走ったのです。これをもって岸田首相は、12月23日東京都内での講演で、ロシアのウクライナ侵攻後に自民党の麻生太郎副総裁から「首相には平時の宰相と有事の宰相がいる。あなたは間違いなく有事の宰相だ」と言われたことを引用し、「先送りできない問題に、真正面から愚直に取り組み、ひとつひとつ答えを出していく。こうした挑戦をおこなっていくことが、私の歴史的な役割であると覚悟をしている。この覚悟のもとで取り組んだ」と述べて正当化しているようです。これに対してネット上では「言葉に酔っている」「麻生さんに踊らされている」などと揶揄するコメントが多く見られます。

岸田首相については安倍元首相が内輪の会合で次のように評していたと言うことです。

「岸田にはパッション、気持ちがないから（周囲や国民から、ポジティブな反応が）はね返ってこないんだ。オレはこれを絶対にやり遂げたいとか、これだけは守りたいんだという気持ちがない。だから、総理になっても誰にも支持されないと思うよ」

今の岸田首相を見ると安倍元首相の評価の通りだと言うことが分かります。防衛費増額については国民の多くが支持しているのですが、最近の物価高騰の中で国民の生活不安が大きくっていることに対する配慮が岸田首相には全く感じられないのです。本人は「いや４兆円のうち１兆円に絞っており配慮している」と言うのでしょうが、岸田首相の言葉からは全く伝わってきません。岸田首相は国民とのコミュニケーション能力がとても劣ると言えます。

岸田首相を見ていると現代のサラリーマン社会の縮図を見ているようです。日本はバブル崩壊後GDPが横ばいで賃金も横這いとなっていますが、その中で裕福な層とそうでないない層がはっきりと分かれています。ここでは裕福な層は子供を私立中学に行かせることが出来る世帯とし富裕層と言います。東京都では２割の子供が私立中学に行っているようなので、富裕層は全体の２割となります。富裕層は医師や弁護士、会計士、自営業の成功者、起業して成功した人が中心ですが、大企業の社員もいます。商社、メガバンク、生損保、放送、製薬、ＦＡ、ＩＴなどの企業では若くして年収2000万円を超え、生涯賃金が５億円を超える社員も多くなっています。これらの企業は日本のインフラを押さえていますので、超安定した企業です。最近これらの企業で偉くなる人は岸田首相のような名門家出身者が多くなっているように思えます。先ず入社するのには名門家出身であることが有利ですし、名門家の子弟は中学から私立は当然です。中学から私立だと高校、大学と長い間同窓が多くなり、同窓生の強力なネットワークが出来上がります。慶応三田会、早稲田稲門会が代表的です。それにこれらの企業社員の約半分は早慶になっており、仕事をする上で有利です。この結果これらの企業で出世する人は富裕層育ちの早慶ＯＢというパターンが出来上がってきています。これは岸田首相が首相になったパターンと同じと言えます。岸田首相を見れば分かるように本人に取り立てて実力があるわけではありません。なのに首相になれたのは父親が有力な政治家という名門家の出身だったことに尽きます。現代の企業でも有力者の子弟は入社後の配属やその後のローテーションで優遇されており、その結果当然のように出世します。これを見て実力なら負けないのにと切歯扼腕するサラリーマンは多くいます。岸田首相はこんなサラリーマンが一番嫌いなタイプと言えます。