熊本高校没落で熊本の教育は崩壊状況
熊本の県民1人当たり所得をネットで調べると平成25年のデータで全国42位となっています(実額は230~240万円程度か。グラフ表示のため正確に分からなかった)。前年が36位だったので6位低下しています。これについて県の担当者は資料の中で生産額では25位であること(県全体の生産額では?人口が多いから多くなる)や1人当たり家計可処分所得で見れば32位であることを引用し、悲観する必要はないと書いています。県民1人当たりの所得は都道府県の所得多寡の概要を把握するものであり、経済的豊かさの傾向が分かります。熊本の県民1人当たり所得が36位から42位になったと言う事実から分かることは、熊本県民の所得は全国の下位3分の1にあるということです。所得が低くても家賃や食品などの生活にかかる費用が安ければ、生活はしやすいと感じるでしょうから、順位程は生活は悪くないかも知れません。一人当たり県民所得が低い県は九州に多く(43位長崎県、44位宮崎県、45位鹿児島県)、九州が大消費地東京や大阪と離れていることも原因だと思われます。
こんな九州が所得を増やす、豊かになるのはどうしたらよいか考えると、やはり子供の教育に力を入れるしかないと思われます。これを言うと明治や昭和の時代の人の考え方のように取られがちですが、東京の教育投資の多さとそこから育った社会人を見ると、豊かになるのは教育に力を入れるしかないと確信します。東京で30代で年間1,000万円を超えるような給料が貰える優良企業の社員の半分は早慶卒であり、早慶以上の学歴が無いと出世できなくなっています。そして早慶卒の半分は内部進学と言われる大学付属中高からの進学者です。これらの付属中高は合格するためには小学3,4年生から進学塾に通い、入学すると年間100万円程度の学費が必要ですので、早慶卒には大変な教育投資が成されていることが分かります。こんな投資を熊本で出来る家計がどれほどあるでしょうか。全国42位の1人当たり県民所得では限られます。要するに所得により子供に受けさせられる教育の質が決まってきます。この結果熊本の教育水準も当然低くなっているはずです。毎年小中学生を対象に全国学力テストが行われていますが、熊本県は全国平均以下となっていますので、1人当たり県民所得の順位と同じ程度と予想されます。全国学力テストでは北陸の県が上位にありますが、実は北陸の県は1人当たり県民所得でも上位にあります。ここからも所得と教育は連動すると言えます。
このように教育水準が低い熊本県ですが、熊本のトップ進学校である熊本高校は全国各県のトップ校に負けない進学実績を誇ってきました。これにより熊本県人には優秀な人が多いと言う評価を維持していた面があります。ところ熊本高校に今年異変が生じています。熊本高校の難関大学への進学実績を見ると東大18人、京大10人、一橋6人、東工大2名、早大22人、慶大6人(以上6大学が上中下の上クラス)となっています。前年が東大16人、京大20人、一橋6人、東工大4人、早大23人、慶大14人ですから、京大と慶大で各10人、8人減らしています。それ以上に目につくのが医学部進学者の減少です。昨年が78人に対し今年は48人と38人減少しています。この中で熊大医学が前年35人に対して今年29人、九大医学部が昨年4人に対して今年0人です。また九大全学部の合格者は昨年65人から今年は33人へと半減しています。濟々黌が48人ですから異常な少なさです。熊本高校以外の高校なら各年の生徒の質のばらつきより進学実績に大きな差が生じることがありますが、熊本のトップ中学生が集まる熊本高校で生徒の質が今年だけ大きく劣ったということは考えられず、生徒以外に原因があると考えられます。それは教師であり、学校の雰囲気が疑われます。九大は全国的に見れば中ランクの大学であり、九州の各県のトップ高校は50以上合格できる入試水準です。これが33人と福岡県の高校で見ると10位くらいに落ちたと言うことは、生徒が学習意欲低下ウイルスに感染した可能性があります。これが深刻なのは、この症状が熊本の他の高校にも伝染し、只でも低い熊本の高校の学習レベルが更に低下することです。
新聞報道によると熊本県教育委員会は今年春県立高校に朝課外の廃止を検討するよう要請(指示)したということですが、その理由について熊本県教育委員会は、「2022年度に本格導入された新学習指導要領は主体的、探究的学びを重視しており、新要領に沿って従来の学びを変え、授業の充実を図る必要がある。教員にはゆとりが生まれ、保護者は早朝の送迎などの負担が軽減される。」と説明しているとのことです。これは以前子供の学力が落ちた元凶として糾弾されたゆとり教育に飛びついた教育委員会と同じであり、その根底には教員の仕事を楽にしたいという考えが伺えます。熊本県教育委員会は公立高校付属中制度にも飛び付き、八代高校、玉名高校、宇土高校に付属中学校を設けましたが、この制度のメリットである進学実績の向上は全く見られません。東京の都立高校付属中が進学実績の向上に繋がっているのと対照的です。
熊本県教育委員会の職員の大多数は教員が代わり番こに努めており、教員のレベルがそのまま教育政策のレベルとなります。熊本の教育水準の低さは教員のレベルの低さの反映とも言えます。これを許しているのが教育長に教育についての見識の無い知事部局の部長を任命する蒲島知事の人事です。もし本当に熊本の教育を引き揚げたければ教育長は教育に見識の有る人材を全国から探して据えるべきだと思われます。
現在熊本ではTSMCの大規模工場が建設され、約1,700人の新規雇用が生まれるようですが、TSMCやソニーからの出向者を除く雇用は約1,200人でいずれも工場労働者です。一方TSMCは筑波と大阪に研究開発拠点を設置すると発表していますが、これは熊本にはTSMCが求める高度な人材がいないためです。熊本工場の労働者は年収300~400万円のところ筑波や大阪の研究開発要員は年収1,000万円を超えることになります。これが教育格差の現実です。熊本は熊本高校の没落を熊本の教育崩壊のサインと捉え、教育の再興を図る必要があります。