「異次元の少子化対策」もGDP倍増政策でのみ可能

岸田首相が1月4日の年頭記者会見で、異次元の少子化対策に取り組む方針を表明しました。対策としては、「児童手当などの経済的支援の強化」「幼児教育や保育サービスの量・質両面からの強化と産後ケア、一時預かりなどの支援拡充」「育児休業制度の強化を含めた働き方改革の推進」が3本柱で、今後具体策を取りまとめるということです。また、4月に発足するこども家庭庁の下、今の社会において必要とされるこども政策を体系的に取りまとめた上で、6月の骨太方針までに将来的なこども予算倍増に向けた道筋を提示すると述べています。

こども庁の2023年度の予算規模は約4.8兆円となっていますので、将来的には約10兆円を目指し、6月までに倍増に向けたロードマップが示されることになります。財源はどうするんだろうと思っていたら、岸田首相の盟友で自民党税制調査会の幹部である甘利元幹事長が5日の夜に出演したBS番組で「岸田首相が少子化対策で異次元の対応をすると言っているので、例えば児童手当ならば、しっかり議論して財源論にまでつなげていかなければならない」「子育ては全国民に関わることなので、幅広く支えていく体制を整えていかなければならない。将来の消費税も含めて、少し地に足をつけた議論をしなければならない」と述べ、児童手当の拡充など少子化対策を進めるための財源の1つとして、将来的には消費税率の引き上げも検討の対象になるという考えを示したということです。こども庁の予算の増額分約5兆円という数字は消費税2%に相当しますので、この甘利氏の発言は岸田首相と気脈を通じてのものと思われます。この前防衛予算増額分の一部を増税で賄うことで国民から総スカンを食らっている中で、消費税の引き上げに言及するのですから大したものです。甘利議員や増税を唱える自民党議員は相当選挙に自信があるようです。有権者も舐められたものです。

防衛費予算と言い、少子化対策予算と言い増額するとなると直ぐ政府や自民党は増税を言い出しますが、発想が間違っています。税収を増やす基本は増税ではなくGDPを増やすことです。GDPの中身である所得が増えれば所得税や法人税が増えますし、消費税や資産税も増えます。即ちGDPが増えれば増税(税率引き上げや新税)しなくても税収が増えます。世界の多くの国はGDPを増やして増大する予算原資を賄って来ています。ところが日本だけ1990年初めから30年近くGDPが横ばいであり、増税や社会保険料などの公的負担を引き揚げて賄っています。その結果家計の収入に占める公的割合が約45%に達しており、庶民の家計の遣り繰りは限界に来ています。更に昨年9月以降は3%を超える物価上昇に見舞われ、庶民の家計はパニックです。こんな中で増税を言ったら、いくら目的は正しくても庶民は同意できません。やはりここは世界各国に倣って税収増大の王道であるGDP増大を目指す必要があります。2022年度予算は約107兆円で、この内税収は約65兆円となっており、2021年のGDP約537兆円の約12%となります。GDPを年間10兆円増やせば年間約1.2兆円の税収が増えることになり、これが10年続けば約12兆円の税収増加となります。GDPの増加=所得の増加であり、これなら国民の抵抗感はありません。現在国債の発行残高は1,000兆円を突破しており、これ以上増やさないためにはGDPを増やして税収を増やすしか方法はありません。政府自民党の皆さんは国士ぶって増税を唱えるのではなく、GDP増大策を考え実施すべきです。これ以外に日本を救う道はありません。「そんなことは分かっている。どうやって増やしたらよいかが分からないんだ」という声が聞こえてきそうですが、それはお隣韓国の例が教えています。韓国は国内市場が小さいとして輸出の増大を国家目標に掲げ、GDPに占める輸出の割合を約42%まで高めて豊かな国となっています。GDPに占める輸出の割合が約48%と世界トップであるドイツもそうです。このようにGDPを増やすには輸出を増やすかありません。日本のGDPに占める輸出の割合は16%程度ですからあと3倍は増やせます。これは菅首相の経済ブレインだった元ゴールドマンサックス証券調査部長のデービット・アトキンソン氏が主張していることです。菅首相はこの主張を採り入れて経済政策を進めていましたが、岸田首相は放棄してしまいました。この経済政策は誰が政権を担っても日本が進めるべき唯一の経済政策です。早く岸田首相に気付いて貰いたいものです。