大学理工系増設と同時に普通高校を高専に転換すべき
1月12日の読売新聞によると文部科学省は、今年度創設した3,000億円の基金を活用し今後10年かけ、デジタルや脱炭素など成長分野の人材を育成する理工農系の学部を増やすため、私立大と公立大を対象に約250学部の新設や理系への学部転換を支援する他、情報系の高度専門人材の即戦力を養成するため国立大と高専が専門人材の育成に実績がある学部・研究科の定員を増やす場合に人件費や施設整備費を支援する方針を固めたという報道です。
ここ30年の日本経済の停滞は製造業の衰退が原因であり、製造業復活のためには理系人材の増強が欠かせません。今回の文部科学省の方針はこの手助けになるものであり、妥当だと思われます。文部省としては私大が文系学部中心であり、現在日本に必要とされているのは理系人材であることによるミスマッチの解消を狙っているようですが、これだけでは問題は解消されません。それは実力の伴った理系人材を増強するためには、高校時代の教育が重要だからです。現在高校は普通高校が約7割を占めていますが、普通高校は職業高校と比べると職業選択としてはニュートラルです。高校2年進級時に主に数学が得意かどうかで理系と文系のコースに分かれています。問題はこのコース選択に職業選択の意識が希薄なことです。職業が人生の基盤であることを考えれば、職業選択があってコース選択となる必要があります。また現在普通高校での文理コース選択は2年進級時が大部分ですが、数学が得意か不得意かは中学3年次で分かっていたはずで、高校進学時に理系か文系かのコース選択が可能なはずです。従って高校選択時に理系高校または文系高校を選択するのが合理的となります。さらに進んで大学では殆どの生徒が職業別学部に進学するわけですから、高校も職業高校が望ましいことになります。工学部なら工業高等専門学校(高専)や工業高校卒業者の方が入学後速やかに高度な専門教育を実施できます。高専の場合大学3年次編入となっていることから大学でも高専卒業生は普通科卒業生より専門性が高いと認めていることになります。実際普通科から工学部に進学する生徒は、実質2年間の専門教育では企業が求める技術水準に達せず、修士課程に進むのが常識になっています。一方高専卒業者は企業から引っ張りだこですが、多くが大学に進学しているようです。これは就職後大学卒の学歴がないと出世に影響するためと考えられます。
このようなことを考えれば、普通高校を将来の職業選択に応じた高専に改編することが考えられます。今の高専は工業高専が中心ですが、職業に応じて医学高専(大学医学部や薬学部、医療関係の職業に就く人向け)、法学高専(法学部や法曹関係の職業に就く人向け)、会計高専(公認会計士など会計関係の職業に就く人向け)、教育高専(教員になる人向け)、公務員高専(公務員になる人向け)などを設けます。普通高校は東大、京大など360°型頭脳を持つ人向けとして小数残します。これで大学は専門的な学習・研究の場にレベルアップします。これをしない限りどれだけ理系大学や学部を増やしても低学力の理系人材を量産するだけで、日本の有益な理系人材不足の問題は解決しません。