日銀は日本の金融システムを危うくする存在

2023年1月31日の日銀毎旬報告によると国債残高は20日より約5兆円増えて約578兆円となっています。一方主な買入原資である日銀当座預金は約14兆円増加し約524兆円です。この結果日銀当座預金だけでは国債を買えず、差し引き約53兆円の国債についてはその他の預金などを充てていることになります。昨年の6月まではほぼ当座預金残高で国債を購入出来ており、国債購入は日銀当座預金の運用と言える状況でした。これが昨年7月以降日銀当座預金とその他の預金をかき集めて国債を購入している状況に代わっています。この理由は日銀当座預金を銀行が引き出している、あるいは銀行が日銀当座預金に置く額に限度を設けているためと考えられます。この結果日銀はもうこれ以上国債を購入できないかというと、そんなことはありません。日銀は国債を購入する場合、その原資として負債勘定の日銀当座預金の金額を増やせばよいので出来るのですが、問題は銀行がその日銀当座預金を引き出す場合に発生します。日銀当座預金は全部国債に代わっているため、国債を売却しないと日銀当座預金を返還できないのです。例えば銀行から日銀に100兆円の引き出し要求があれば、日銀は国債を100兆円分売却しない返済資金を確保できません。しかし日銀が100兆円も国債を売却しようとしても買い手はいないし、価格が大きく下がって(金利は上がる)しまいます。日銀がここまで国債を買っているのは金利を下げるためですから、それはできません。でどうするかというと日銀は銀行と交渉して引き出し額を小さくして貰ったり、引き出し日を伸ばして貰います。銀行の貸付先が借入金の返済猶予交渉をするのと同じです。これほど大量の引き出しはないでしょうが、今後日銀が銀行からの日銀当座預金返還要求に答えられずに引き出し額や引き出し日を銀行と交渉する事態はあり得ると考えられます。こうなると銀行に約束通り借入金の返済ができない借入会社と同じであり、銀行としては要管理会社と同格に扱うことになります。

今後利上げがあると国債価格が下がり日銀保有国債に含み損が発生する(12月末で8.8兆円になった)ことが良く問題視されますが、実はこのままでは日銀が銀行の日銀当座預金返還要求に答えられない事態が発生することの方が大きな問題と言えます。日銀のバランスシートはこのような運用と調達のミスマッチ(当座預金と言う当座性資金で、金融政策上簡単に売れない国債を購入している)の問題を抱えており、黒字倒産会社のそれと言えます。日本の金融システムの元締めである日銀は、国の財政に深く関与した結果、金融システムを危うくする存在となっています。